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なぜロシアは民間施設まで攻撃するのか?米CIA系シンクタンクが備える「4つのシナリオ」から見えたプーチンの狙いと早期“和平合意”の可能性=高島康司

<シナリオ3:ロシアがウクライナを東西に分割>

これはロシアがウクライナを分割し、西部は現ウクライナ政府が支配し、残りの半分はロシアが占領するシナリオだ。

この場合、ロシアはロシア系住民の多い東ウクライナの大部分を新たな独立国家として承認し、ウクライナを東西に分断することになる。ドンバス地方のルハンスク共和国とドネツク共和国は、親ロシア派のこの新東部国家に統合され、「ノボロシア」「マロロシア」(それぞれ「新しいロシア」「小さなロシア」と訳される)と名付けられる可能性がある。ロシアは、新たに承認された政府の領域のみを占領し、ドニエプル川以西のウクライナ政府の支配下にある領域は、NATOとのバッファーとして残されることになる。

長所:モスクワと経済的、政治的、安全保障的に緊密な関係を保つことを約束する比較的均質な国家を作ることは、ウクライナをさらに占領しようとするよりもはるかにコストがかからない。

短所:しかし、親欧米政権が支配するウクライナの西部は、プーチンが排除しようとしている高度に軍国主義的な「反ロシア」国家として残り、さらなる軍事衝突の危険性をはらんでいる。また、国際社会の大半はウクライナ東部の国家を承認しないため、ロシアはその主要なスポンサーであり続けることを余儀なくされるであろう。

<シナリオ4:ロシアはインフラを破壊し、ウクライナを弱体化する>

これは、ロシアがウクライナの防衛力と経済力を低下させてから、停戦協定を締結するシナリオだ。

このシナリオでは、パルチザンやウクライナ軍残党を含むウクライナ住民の予想外の激しい抵抗により、ロシアが同国を十分に支配することはコストがかかりすぎ、非合法で不人気なロシア押し付け政権と和平協定を結ぶことはモスクワの目標を達成することにならないと判断し、ウクライナの防衛力と経済力を低下させてから、和平協定を結ぶ。

高価な占領に代わるものとして、ロシアは事実上政権交代へのこだわりを捨て、代わりにウクライナの民間・軍事インフラ、港、空港、鉄道、軍、工場、武器庫、軍事基地を徹底的に破壊し、すべての地上軍を撤退させるだろう。数千人のウクライナ軍人を殺害し、同国の軍事設備の多くを破壊した後、ロシアは撤退し、政府が以前の方針に戻り、再武装した場合、弱体化したウクライナに対してこの作戦を繰り返すと脅すだろう。

長所:このシナリオはロシアにとって軍事的、経済的コストを最小限に抑えることができるが、ウクライナにとっては領土をさらに占領されたり分割されたりすることなくロシアの圧倒的な猛攻を生き延びたことで、大きな成功とみなされるであろう。ロシアにとってこのシナリオの主な利点は、おそらく西側からの最も厳しい制裁のいくつかをゆっくりと解除するプロセスの引き金となることであろう。

短所:ウクライナの憲法改正が実現しない場合、同国の中立性と非武装化に関するロシアの基本的な目標は達成されないままとなり、その目標を達成するために数年後に再び同様の作戦に出なければならない可能性が考えられる。

Next: ロシアが狙っているのは「シナリオ4」? ウクライナは弱体化へ

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