ウクライナ情勢を見ていると、やはり当初はプーチンも侵攻は考えていなかったように思える。それが現在では民間施設まで攻撃している。プーチンは今、何を考えているのだろうか。それを読み解くヒントとなる、CIAの民間委託シンクタンクが示した4つのシナリオについて解説したい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年3月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
開戦は突然に決まった?
ロシア軍のウクライナ侵攻から約3週間が経過した。当初は5日程度で終了するはずの作戦だったようだが、内外で指摘されている通り、今回のウクライナ侵攻は予定通りには進んでいない。ロシア軍はぶざまとしか言いようがない。補給路を構築することなくいきなりウクライナ全土に侵攻し、いたずらに戦火を拡大させている。西欧諸国から軍事支援されたウクライナ政府軍の予想外の強さがロシア軍の侵攻をくい止めているが、それだけではないようだ。
2月21日までプーチン大統領は、ウクライナには侵攻する意志はないと明言していた。しかしながらその後数日でプーチン大統領は態度を変え、ウクライナ国境で軍事演習を実施していたロシア軍をウクライナに侵攻させた。
軍事作戦の実施には長い補給路(兵站)の構築がもっとも重要だが、軍事演習にはその必要性はない。今回の侵攻は、演習を行っていた軍でいきなり侵攻したため、補給路の構築は後回しになってしまった。その結果、65キロに及ぶ長い補給部隊がウクライナ政府軍の格好のドローン攻撃の対象になった。
このような不手際を見ると、プーチン大統領によるウクライナ侵攻の決断は2月22日以降の数日でいきなり行われた可能性がある。
プーチン大統領にそのような決断をさせたのは、おそらく緊急性の高い事態が発生したためだ。それは以下の2つである。
1. チェルノブイリ原発に保管されている放射性物質を撒き散らす「汚い爆弾」によるウクライナの攻撃
2. ウクライナ国内にある生物化学兵器の実験施設からの攻撃
西側のメディアでは、これらの可能性は無視されているが、十分に検討に値するはずだ。
一方、補給路などの準備をしないでウクライナに侵攻したロシア軍だが、体制を立て直し、ウクライナ北部、西部、そして南部に支配地域を拡大している。
いまロシア軍は首都のキエフから15キロの地点に待機し、キエフへの散発的な攻撃を行っている。
なぜ民間施設まで攻撃されるのか?
しかし、当初は明らかに軍事施設に対象が限られていたロシア軍の攻撃だが、いまは原子力発電所、病院、学校、ショッピングセンター、集合住宅などの民間施設が攻撃対象になっている。攻撃に見境がなくなり、無差別になっているとも見られている。
米国防総省の高官も、ロシア軍がこれまでに950発以上のミサイルを発射したとしたうえで、引き続き首都キエフが長距離からの砲撃にさらされ、住宅地などが頻繁に攻撃されていると指摘しいる。また、アゾフ海に面する東部の要衝マリウポリもロシア軍が孤立させたうえで、市街地に激しい砲撃を行っている。このような攻撃から。民間人の死者数も増加している。
しかし、それにしても、ロシア軍がこのような無差別的な攻撃を行っている理由と狙いは一体なんなのだろうか?
日本の主要メディアでは、ウクライナ軍の頑強な抵抗にあって焦ったロシア軍が、人々の恐怖を煽るために行っているというように説明されている。ロシアの敗北は決まったという報道も散見される。
しかし、本当にそうなのだろか?民間施設を攻撃対象にすることには、別な狙いがあるのではないだろうか?