中国の大都市には、ちょっと考えられないほどの数のショッピングモールが存在します。しかし、空き店舗率は危険水域を超えており、早晩、整理淘汰が始まるでしょう。今回は、各ショッピングモールが生き残りのために行っている4つの方法をご紹介します。これらは日本の都市型商業施設はもちろん、異業種でも参考すべき内容です。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2022年7月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
ショッピングモールが生き残る方法
今回は、ショッピングモールの生き残る道についてご紹介します。
中国の大都市には、ちょっと考えられないほどの数のショッピングモールが存在します。
2020年の年末、経済評論家の呉暁波氏が、50人の経済学者に行った2021年の中国経済に関するアンケートを基にしたライブ配信の中で、「ショッピングモールは消滅する。変化の時がきている。サービス消費(体験消費)が物質消費に取って代わる」という内容の話をして、大きな話題となりました。
もちろん、「消滅する」というのは大袈裟にしても、すでに経営が難しくなっているショッピングモールは珍しくありません。空き店舗率も新型コロナの感染拡大が厳しかった2020年には30%を突破し、2021年でやや持ち直したものの危険水域と呼ばれている20%を超えています。
原因は、想像通り、ECの浸透です。もはや買い物というのはオンラインでするというのが基本であって、オフラインの買い物は食事や映画を見に出かけたついでにすることになっています。
それでも新しくオープンしたショッピングモールは話題になって人が押し寄せるため、業界関係者は新規オープンに活路を見出そうとし、完全にショッピングモールが過剰になっています。コロナ禍がようやく落ち着き、今後、ショッピングモールの整理淘汰が始まることは確実です。
では、ショッピングモールは生き残るために何をすべきなのか。これは日本の都市型商業施設、実体店舗でも早晩起こる現象です。
今回は、各ショッピングモールが生き残りのために行っている4つの方法をご紹介します。
危機に直面するショッピングモール
中国の大都市に行くと、都市の中に無数のショッピングモールがあることに驚かれる方も多いのではないでしょうか。
日本の場合、ショッピングモールというと、都市の中というよりも近郊にあるのが一般的です。広大な敷地を確保しやすいというのが最大の理由ですが、都市方面からは公共交通機関での来客、郊外方面からは自動車による来客と、広い商圏を確保しやすいいう理由もあります。また、少し遠い方がお出かけ気分が出て、ついつい消費し過ぎてしまうという心理もあるのかもしれません。若い世代がデートで行っても、ファミリー世代が家族で行っても、半日から1日遊べるというのが日本のショッピングモールです。
中国にももちろん郊外型のショッピングモールもありますが、目につくのは何と言っても都市型のショッピングモールです。例えば、北京市の故宮博物館の東側には、北京で最も有名な繁華街「王府井」(ワンフーチン)がありますが、この大通りの東側がまるごとショッピングモールになっています。
厳密には、昔自由市場であった地域が東安市場となり、建て替えをして新東安広場というショッピングモールになり、さらに北側には「北京apm」というショッピングモールが連結をして一体化をしています。
本来繁華街というのは、さまざまなお店があり、ぶらぶらするだけでも楽しめる場所ですが、その楽しみが完全にショッピングモールに取って変わられました。雨が降った時、暑い時や寒い時は、ショッピングモールの中をぶらぶらできるので快適です。
そのショッピングモールが危機を迎えています。5万平米以上あるショッピングモールは8,000カ所あると言われていますが、調査会社フロスト&サリバン中国のデータによると、2020年には空き店舗率が30%を突破して大きな問題となりました。この年は新型コロナの感染拡大があったため、契約を更新せず解約をした店舗が多く、新しく入居する店舗もほとんどなかったためです。
2021年になって改善をして、空き店舗率は21.1%まで下がりました。しかし、この数字自体が非常に問題です。一般的なショッピングモールでは、空き店舗率が20%を超えたら存続の危険水域と言われます。確かに、5軒に1軒が閉店というショッピングモールがあったら、テンションが下がりそうです。
このような原因のひとつはショッピングモールが過剰になっていることです。ショッピングモールの入居率が下がっているため、店舗に有利な条件で契約をすることが多く、店舗は新しくオープンした、より売上が立ちそうなショッピングモールに引っ越してしまいます。
つまり、立地がよく、集客ができるショッピングモールは来客も多く、賑わっていて盛況に見えますが、条件の悪いショッピングモールは閑古鳥が鳴いているという二極化が起きています。今後、ショッピングモールの閉鎖が続くことは確実です。
実際、閑古鳥が鳴いているショッピングモールに平日に行くと、怖いぐらい人がいません。本当にここは中国なのかと思うぐらい人がいないのです。そういうところに名店と呼ばれる商店や飲食店も出店をしていて、並ばずに買える穴場になっています。SNSでバズったお菓子などは、どの店に行っても売り切れだったり、行列をしないと買えませんが、この閑古鳥が鳴いているショッピングモールのお店に行くとすんなり買えたりします。
おそらく、話題になったお菓子だから、手近で手に入るなら買ってみるけど、わざわざ遠くまで買いに行くほどではないという考え方をする人が多いのだと思います。
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