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円・日本国債の大暴落は不可避。黒田総裁の悪手で「日銀債務超過」待ったなし=吉田繁治

2022年秋から物価上昇は明らかになる

2022年の秋には、日本は、半年遅れの資源高騰と円安の要素が加わって3%から4%のCPI上昇になる可能性も高い。日本は商品の基礎資源の輸入国ですから、円安が物価上昇の大きな要素になります。

ところが日銀は、2022年の平均物価は2%上昇とはしていますが、物価上昇は一時的としています。

何の理由で一時的なのか示してはいない。ウクライナ戦争が8月ころに停戦し、エネルギー・資源・穀物価格は下がるとしているのかもしれません。物価と金利に責任をもつ当局として見通しが甘い。

22年5月には、米国の財務長官イエレンは、「物価見通しを誤っていた」と議会で謝罪しました。国会に呼ばれた日銀の黒田さんは、日銀の物価見通しを誤りとは言わない。逆に、「世帯は物価上昇を受け入れている」と発言して、不承不承、撤回したくらいです。

日銀は米国のリセッション入りを想定している?

日銀は本当に、「日本の物価上昇は一時的」としているのか。本当にこれなら、日銀は、2022年秋からの米国のリセッション(激しい不況)と株価の暴落を想定していることになります。

株価は下がっても、賃金の上昇があるのでリセッションに陥らず、消費景気の好調が続くとすれば、米国の物価は、下がらないからです。

米国企業は、企業の売上が増えない不況になると、レイオフをして値下げをする体質をもっています。長期雇用を守る日本と、ここが違います。もともと米国人の平均就業期間は3年ですが、日本は平均が11年です。

政府の高級官僚すら、大統領の交替とともにポリティカル・アポインティー(政治任官)の制度があって入れ替えがあります。4年に1回の大統領選挙は、任官と罷免の機会でもあるのです。

0.25%の利上げで債務超過に陥る日銀

日銀が、2022年の物価上昇を2%とし、秋から3%、4%に上がる可能性があるとしない理由は他にあります。3%の物価上昇なら、すくなくとも、短期マネーでは0.25%の利上げをしなければならない。

日銀は現在、541兆円の国債を保有し、銀行、生保、外銀の日銀当座預金は547兆円に膨らんでいます。10年未満の国債の金利が0%なので、この当座預金547兆円の超過準備金の金利も0%です。

必要な0.25%の利上げをすれば、当座預金547兆円の超過準備金にも0.25%の金利を払わねばならない。準備金は最大7兆円でいい。これは金利0%です。しかし540兆円という異例の超過準備には0.25%の金利を付けなければならない。
(日銀のB/S:2022年7月4日)
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2022/ac220710.htm/

日銀が0.25%に短期金利を上げ、540兆円という超過準備の金利が0%のままなら、銀行、生保、外銀は、日銀当座預金引き出して、約3%の金利が付く米国債の買い、または短期金利が0.25%に上がり価格が下がった円国債の買いをするからです。

それをしないと銀行が赤字になります。

日銀が、当座預金547兆円を減らさないためには、当座預金に0.25%の預金金利をつけなければならない

日銀は「547兆円×0.25%=1.36兆円」の利払いをしなければならない。加えて、541兆円の平均がゼロ金利の保有国債の時価は、「541÷(1+0.25%×8年)=541÷1.02=530兆円」に下がります。

日銀の0.25%利上げ1年後の合計損失は、「1.36兆円+11兆円=12.36兆円」になります。日銀の自己資本は引当金7.7兆円をいれても、11兆円しかない。つまり日銀は0.25%の利上げ1年後には、債務超過に陥ります。

物価が3%から4%上がり、0.25%+0.25%の利上げになれば、6か月で債務超過になるでしょう。

中央銀行が債務超過になっても、ドイツのように政府財政の赤字が少ないか黒字なら、問題はない。

世界の金融市場では「政府財政+中央銀行の信用」で、その国の通貨と国債を見るからです。政府財政の信用が高ければ、中央銀行の債務超過は、無視されます。

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