ビジョンファンドの利益は帳消し
ところが、絶好調だったのがコロナ直後の金融緩和のときだったのです。
金融緩和のときっていうのは、金利が下がってお金がジャブジャブに膨れ上がりますから、そういったお金がどこに流れるのかというと、これから成長するとみられるITだったりとか、AI、そういったところにお金が流れるのです。
いわゆる「バリエーションが切り上がる」ということです。
上場株も同じように上がって一時は絶好調というところだったんですが、それって結構実態がなかったりするのです。
少なくとも事業としてはあるかもしれないですが、利益を出していない。
けれども将来への期待でバリエーションが切り上がっていた。
そういった企業が少なくなかったと考えられます。
結果それでどんどん下がってきまして、ソフトバンクビジョンファンドの累計損益は、一時期7兆円もの利益があったものがガガっと減ってしまいました。
今、評価を改めて見直した結果、わずか1,100億円の利益。つまりもうほぼ元の木阿弥になってしまったというような状況なのです。
この数年間がまるで水の泡というような状況です。
実は(別の記事でも解説しているのでそちらで詳しく見ていただきたいんですが)特に上がっていたときは、いわゆる未上場株のハイバリュエーションって非常に問題なんじゃないかと思っています。
いま金融緩和とかコロナ後のITへの期待ということで、すごく高くなっていましたが、それって、金融緩和が終わったり、期待が剥げたときには、一気に落ちるんじゃないかということです。
今まさにそれが起きているわけなんですね。
当時は「砂上の楼閣」という表現をしていました。まさにその砂上の楼閣が一気に崩れてしまっているというような状況です。しかもあろうことか、そういったバリエーションが切り上がっている、株価が割高なときに、このソフトバンクグループはたくさん、しかも400社の小さい企業に投資をしたのです。400社もあったら、どんなに頭のいい優れた人がいたとしても管理しきれないですよね。
その中から、とんでもない成長企業が出るんじゃないかということで、いわゆる半分博打的に投資している側面が否めないわけです。
孫社長、敗戦の弁
孫社長が敗戦の弁を述べています。「そもそも実態が悪いということは、包み隠さず説明します」ということです。
さらには先ほど言いました通り、株価が高いときにたくさん投資していた。その時はどんどんいけるんじゃないかということで、有頂天になっていた。利益が3兆円4兆円と上がっていたときですから、もっといけるんじゃないかと人間心理としてはわかります。けれどもそういったときにこそ、ブレーキをかけなきゃいけないのが、実は投資の本質であったりします。
そして逆にいま株価も下がって、人々のこの投資意欲が失せつつあるときです。まさに社長もその流れに沿って、今は投資を抑えるときだということを言っています。単に投資を抑えるだけではなくて、ビジョンファンドも企業で人を雇って、新たな企業投資すべきを「探すハンター」と言っていましたけれども、そういった人を雇っていました。そういった人たちも、リストラしてコストを削減すると言っているのです。
これって「どっかで見たことあるぞ」という風景なんです。
というのも、まさに素人、投資を始めたばかりの初心者が落ちてしまいやすい流れなのです。私自身が投資顧問やっていますから、実際に初心者の方も多く入会してきます。(初心者の方は)そういった株価が高いときに、ついつい手を出してしまう。これは、ある意味誰もが通る道ではあるんですが、まさに素人。今始めたばかりの人が陥ってしまう内容なのです。