具体策なき「新しい資本主義」
話を「新しい資本主義」政策に戻しますが、「資産所得倍増」と「脱新自由主義」に関しては、特に取り上げるものはないです。
「資産所得倍増」はNISAとiDecoの微調整で、日本人全員で株価を支えてもらおうというものですし、“脱安倍路カラー”の象徴ともされる「脱新自由主義」は政治的イデオロギーの問題で、「分配優先で成長を促す」という具体的な道筋は、何も示されてはいません。
人々が資金的に余裕を持たない限り成長なんてあり得ないと、自民党総裁選挙では、保守政党でありながらリバラル色が強い主張をして、これを「脱新自由主義」の象徴のように語っていましたが、そのための財政出動に関してはなんの具体的なメッセージを発していないどころか、総理になってからはこのことに関しては「音無しの構え」になっています。
「分配なくして成長なし」として所得倍増を促す「令和版所得倍増計画」も、いつの間にか「資産所得倍増」に看板が据え換えられていて、後でも説明しますが、所得増に関しては、政府がどうのというよりも「個人裁量」に期待する内容になっています。
なんか、もう「新しい資本主義」政策検証の結果が怪しくなってきましたね。
「成長と分配」と言いながら、結局は国民に丸投げ?
それでも岸田政権としては、「成長と分配」政策においては明確にメッセージを発しています。その本質を、というか「本性」を探っていきましょう…。
<成長戦略>
政府がデジタル化と脱炭素推進のメッセージを出すことで、企業がインフラ投資に積極的になる…。
<分配戦略>
副業・兼業ができやすいように選択的週休3・4日制を推進、リカレント教育、職業訓練などを拡充…。
これを表現を変えると、こうなります。
<「成長戦略」のウラ>
財政出動をしないで民間企業に「デジタルインフラ投資」と「脱炭素インフラ設備」をさせる…。
<「分配戦略」のウラ>
給料は上げられないので「副業・兼業」を頑張ってもらう、「副業・兼業」のアイデアがないなら「投資(資産運用)」で所得を増やしてもらう…。
なんと、あれだけ言っていた「所得倍増」は「個人裁量」に任せるというのです。企業の設備投資も、表現の仕方は色々ありますが、わかりやすく言えば「(お金を出さずに)企業の“お尻を叩くことで設備投資をさせる」だけというものですね。
国がやることは、国が主導して給料が上げられる分野においては給料を引き上げ、それに伴い民間企業が給料を上げてくれることを期待し、また、政府調達においても、給料を上げた企業を優先するという政策で、なんとか民間企業に従業員給料を上げてもらおうということです。
結局は財政出動は渋るようで、財政再建の財務省の意向に沿ったかたちのようにも見えます。
それでも「アベノミクス“三本の矢”経済政策」で、財政を出すと言っておきながら出さなかったことよりかは、財務省が財政を出さないとしている状況では効率的と言えるのかもしれません。
「アベノミクス“三本の矢”経済政策」での「成長戦略」に当たるのが「経済安全保障」になるのでしょう。
国のお墨付きで一部の産業を支援することで投資を呼び込もうというもので、これも財政出動が伴わない経済政策なのかもしれませんね。