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もう国民より企業優先の税金投入では日本経済は浮上しない。欧米は個人向けに経済政策をシフトチェンジ=斎藤満

黒田日銀総裁は「全体としてみればプラス」と言い続けている

消費者の中にはトヨタをはじめとする輸出企業に勤める労働者がボーナスや賃上げで利益を還元される人もいますが、全体でみれば、企業に利益が回り、その負担は消費者が負う形になります。

このように金融緩和も円安も企業の利益になるのに対して消費者が不利益を被りますが、合体すれば「チャラ」で、前述のように資源を企業に集めればより効率的に使うとの「神話」があり、黒田日銀総裁の言うように「全体としてみればプラス」の判断がなされてもおかしくありません。

ただし、一部の企業が大きく利益を上げ、多くの国民が「消費者」として不利益を被る資源配分を、国民が良しとするかどうかは別問題です。

少なくとも経済という言葉の元とされる「経世済民」の精神には反します。

卵を産めなくなった鶏

足し算すれば全体として「チャラパー」でも、所得分配や資源配分のバランスが大きく崩れると、全体の効率が悪化し、成長を阻害するリスクがあります。

例えば、養鶏所の経営者が利益優先で鶏に餌を十分与えないと、鶏が体力を落として卵を産めなくなります。そうなると、結果的に養鶏所の利益は減り、養鶏所全体の経済はマイナス成長となります。

つまり、企業が労働者の賃金を抑制しすぎると、いったんは企業利益が増えても、労働者が疲弊し、子育てもできずに消費水準を抑えざるを得なくなり、企業は労働者から搾取して短期的に利益を得ても、その後の生産、投資が減って成長が低下します。

また所得分配が富裕層に偏った場合、貧困者の消費は所得が減った分そのまま減少しがちですが、富裕層の消費性向は低く、所得が増えた分の多くが貯蓄に回り、貧困層の消費減をカバーできず、消費全体は減ります。

所得分配があまりにアンバランスになると、この消費減少のように、経済効率が悪くなります。

Next: 卵を産まない鶏に投資しなくなった企業

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