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政府はダイエーをゾンビ企業にした轍を踏むのか?コロナ特例金“ゼロゼロ融資”の期限到来。赤字企業の借金はチャラ。国民はインフレ窮乏に陥る=吉田繁治

ダイエーは企業再生でソンビ企業となった

当方には、直接の記憶があります。2000年の初めころ専門誌に「ダイエーは、負債2兆円を、利益返済する目処が立たない。破産するべきである。リース契約は20年、赤字店舗を閉鎖してもリース料の支払い義務が残るから」という主旨を書きました。

リース料の残債は、B/S(決算時に作って、株主に開示する貸借対照表)に載らない負債です。

ダイエーの本部からは、当方の記事に対しB/S上の負債ではないという「反論にならない反論」がありました。

経産省は、企業再生の支援対象にしたのです(経産省の目的は、企業再生機構への官僚の送り込みです)。

国民のためとして作られる政府機構は、すべてが、裏に官僚の権益拡張と天下り先の拡大という目的があります。コロナ対策と入院の決定を統括していた保険所も、厚労省の医系技官(医師免許をもつ)の天下り先であり、PCR検査を独占していました。

「虎ノ門」には、多くの政府系機関が蟻塚のようにあります。ノンキャリアも再就職の天下り先が必要だからです。1990年代には、当方も出入りしていました。

(注)最近では、東京五輪の予算(総額は4兆円)が、オリパラ組織委員会(会長森喜朗、理事高橋治之)を経て、賄賂が中抜きされ、電通などに流れています。五輪は、政治的利権だったのです。

経産省は、ダイエーが倒産すれば「大量の失業者」が生じるとして、金融支援しました。

当方は、ダイエーをムリに存続させれば、赤字企業の低い報酬が続き、幹部にとってもその先、定年までの20年が幸せではない。

ダイエーが破産すれば無くなったダイエーの売上の分(約2兆円)、IY堂やイオンの売上が増える。倒産で解雇された社員には、職場を移転する機会が生じる。一方、存続したダイエーに残れば、社員は生涯が浮かばれないだろう。

ダイエーの破産処理が、その後の日本経済を発展させると書いたのですが、経産省はゾンビ企業の再生に奔走したのです。次官がダイエー再生の推進者だったという。

ダイエーは救済され、2015年からイオンの子会社になっていますが、救済後20年の業績(3要素:売上、営業利益、生産性)は低い。これは予想できたことです。残った社員は20年、苦労しているでしょう。ダイエーが盛んだった1980年代を知る社員は、すでに定年退職してしまったでしょう。

経済の新陳代謝を止めた経産省の産業政策

1990年からの、経産省の産業政策の基本は、低生産性の既存企業の存続を図ることでした。

これが、日本経済が成長しなくなった50%くらいの原因です。経済を成長させる、シュンペーター的な「創造的破壊」を、経産省が止めていたのです。

歴史は古いのですが、農業の生産性上昇を止めたのは、農水省の、既存農家の保護政策です。

・漁業では、既存漁協への支援です。
・医療では厚労省。
・金融では金融庁。
・学校では文科省。
・日本の産業政策は、社会主義的です。
・建設、交通では、国土交通省。
・自治体とメディアでは総務省。

第二の税をとるNKHは、受信契約を選択できるスクランブル放送にすべきでしょう。なぜしないのか。政府・自民党の広報機関になっているからか。国民の立場からの報道(ジェーナリズム)ではない。それに、既存政党と既存議員に有利な政党助成金(325億円)の廃止も必要です。

政府の保護政策は、参入規制になっていて経済を成長させません。

農協・漁協は、自民党の支持母体であり票田です。自民党は、既存業界の権利を保護し、新規参入許さない政策をとっています。

店舗では、大規模店舗法で新規出店を規制し、商店街を守ってきました。ところが、守られた商店街の95%は、20年、30年後はシャッター通りになっていて、不動産価値もほぼなく、空き家が多い。

店舗を選択するのは経産省ではない。顧客(国民)です。顧客が買わず、採算がとれなくなって、借入金が嵩む事業維持ができずシャッター通りになった。経産省が選択するのではない。

日本では、中小企業の起業が、世界1少ない。保護を受けた既存勢力で埋まっていて、隙間がない。このため、開業率は日本が4.6%、米国は2倍の9%、フランス3倍の15.3%です(開業数/既存企業数)。

政府系金融機関(中小公庫、商工中金、日本政策銀行)は「赤字が政府融資の条件」という逆転融資で、経済の新陳代謝を止め、将来の不良債権を増やしているのです。

政府の企業支援は、あってもいい。日本では、方向が間違っています。「新規の起業支援」でなければならない。

Next: 構造的な赤字の既存業界にマネーを投じる政府の政策

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