fbpx

任天堂「株式分割」でのお手頃価格は“買い”か?ゲーム企業特有の弱点とポケモンの成功で見えた成長戦略、株価上昇に必要なこと=栫井駿介

ヒット作に依存する業績

株価を左右するのは、基本的には業績です。

そこで任天堂の長期の業績を見てみましょう。下図は、1999年3月期からの業績になります。

03-2.jpg

ご覧の通り、実はけっこう山がある。上がったり下がったりを繰り返す会社なのです。

1999年から2006年ぐらいまでは、比較的安定していた時期と言えるかもしれません。そこから2007、2008、2009と業績を大きく拡大しました。

しかしその後2012、2013、2014と営業利益がなんと赤字に転落しているのです。

皆さん任天堂が素晴らしい会社だと思っていたかもしれません。しかし実は3年連続赤字というような、いわゆる暗黒時代もあったのです。

それが2018年頃からもう一度盛り返しまして、2021年3月期で最高益という状況になっています。

「この間に何があったのか?」ということを考えてみたいと思います。

ゲームに関心のある方、これまで(ゲームを)されてきた方であれば、比較的なじみがある内容ではないかと思います。

2001年3月にゲームボーイアドバンスが発売されました。それから2002年ゲームキューブが発売されました。ただしこの時期、私の世代などはそうなんですが、ゲームキューブを持ってる家はほとんどなかったのではないかと思います。どちらかというと、みんなが遊んでいたのはプレイステーションです。

だから完全に押されてた時期でもあったのです。安定していると言いましたが、ここは比較的低迷期と言えるわけです。

ちなみにうちにはゲームキューブがあり、プレイステーションがないという、ちょっと変わった家でした。それはさておき、その前にさかのぼりましょう。

ハードによって明暗わかれる

04-2.jpg

そもそもテレビゲーム市場を開拓したのが、1983年発売のファミリーコンピュータだったわけです。その後スーパーファミコン、そしてNintendo64と続きました。携帯型ゲームの方でもゲームボーイ。私もスーパーファミコン、ゲームボーイ、それから任天堂64、ゲームキューブ、そしてアドバンス。これらは家にありました。

こういった状況で、一方ではソニーに押されるという状況もあったわけです。

それが大きく転換したのが、2005年3月期のニンテンドーDS、もっと世界的な飛躍を遂げたのが2007年3月期のWiiです。このWiiが本当に革新的で、従来のゲームの概念を覆したのです。

それまでゲームというと、子どもが1人でやる。あるいは子どもたちがちょっと集まってやるぐらいのものだったんです。

しかしWiiがフィットネスなど家族みんな、あるいは大人数でやるという需要を巻き込んだおかげで、任天堂は世界的企業へと飛躍するわけです。

売上高がうなぎ上りになりました。Wiiスポーツとかその辺です。皆さん記憶にあるのではないかと思います。

ここで「任天堂は日本のAppleだ」とも言われて、飛ぶ鳥を落とす勢いだと見られていたのです。

ところがWii、案外長続きしなかったのです。ある程度、みんなが持つという中において、飽きが来るわけです。

実際スポーツゲームをやるにしても、最初は楽しいんですが、やっぱリアルスポーツの方が楽しいといった側面もあります。いろんな娯楽はあるわけで、スマホもこの辺から登場し始めました。

そうやってまた苦しい状況になってくるわけです。

問題は後継機です。DSなどは比較的堅調に売れたと思うのですが、Wiiの後継機であったWii U。これ持ってる方って、どれぐらいいらっしゃいますかね。

私はほとんど知りません。それほど売れないという状況が続きました。

なぜなのかというと、1つは元々向いてたゲーマーたちが「どちらかといえばファミリーゲーム」という形で捉えていて、敬遠しだしたというところ。やはりこの時期は、プレイステーションが売れていました。

あとハードの性能も決して高くなかったといいます。ということなどから低迷期が続いたのです。

大きく回復したのが、Switchの発売です。Switch、まさにその名前の通り、携帯型ゲームと据え置き型ゲーム両方使えるというものだったのです。

これまでDSとWii、どちらも持っていた、あるいはどちらかに分散していたものが1つで使えるようになったのです。

もちろん要因はそれだけではないと思うのですが、Switchがヒットして、業績が爆発的に伸びた。
当然コロナ禍も手伝って一段高になっているわけです。

各ハードの売上高を見ると一目瞭然です。

  • ファミコン:6,000万台
  • ゲームボーイ:1億2,000万台
  • スーパーファミコン:5,000万台

それぞれ売れたのですが、その後NINTENDO64・ゲームキューブがそれぞれ3,000万台・2,000万台とあまり売れませんでした。

そこからゲームボーイアドバンス。ニンテンドーDS、Wiiといったところが、かなりの台数売り上げた。そしてSwitchも売れた。一方でWii Uはぜんぜん売れてません、1,000万台というところです。

ハードが売れるものはソフトも売れます。DSはハードもたくさん売れたのですが、ソフトは他と比べてもっと売れてます。Wiiも同じようにハードに対してソフトの売り上げが多いのです。

Switchもそういった意味では、非常に成功したものだと言えます。

やはりハードが売れると、みんな持ってますから、ソフトメーカー側も新しいソフトを作ればそれなりに売れることが見込めます。よって「どんどん新しいソフトを作ろう」という気持ちになるのです。

結局、ハードによってソフトの売り上げも大きく変わってくる。明暗が分かれてくるというわけです。

Next: 任天堂にある大きな弱点…今後は解消されていく?

1 2 3 4 5 6
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー