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任天堂「株式分割」でのお手頃価格は“買い”か?ゲーム企業特有の弱点とポケモンの成功で見えた成長戦略、株価上昇に必要なこと=栫井駿介

IP(知的財産)戦略とは?

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そこで前の社長の君島さんや、現在の社長の古川さん。これらの社長たちが2015年頃に大きく戦略を転換しました。

それが「IP戦略」と言われるものです。このIP戦略って何かというと、要はキャラクターとか、そういう世界観。それを売りにして商品を売りましょうというものです。

端的に言うと、一番このIPを世界でうまく使っている会社。皆さんご存知かもしれません。私は上図で丸3つを書いただけですが、これだけでも怒られてしまうかもしれません。

ここは様々なコンテンツがあります。

ディズニーのコンテンツは、子ども向けの絵本から、当然ランドとか、あるいは映画やアニメなど様々なものがあります。そういったものを日常の中に浸透させておいて、関連する商品をどんどん売ってくるのです。

これによって次々にファンが生まれて、さらに映画も観ればランドにも行くし、様々なグッズを買う。そのグッズには、当然ライセンス料というのがかかっていて、物が売れるたびにチャリンチャリンと(お金が)入ってくる。

そういう戦略があるのです。

振り返って考えてみると、任天堂って、実はIPをすごく持っているのです。マリオもそうですし、ドンキーコング。あるいは最近で言うと、集まれどうぶつの森とか、皆さんが馴染みのあるキャラクター。そこを持っているのです。

ただ、これが十分に生かし切れてないというところがあるのです。皆さんマリオの商品、あるいはマリオのアニメなど、普段の生活で何か関わることってありますか?

私が知る限りそんなにない。そんなに普段の生活に浸透してないと思います。

あくまで、マリオはゲームというイメージがあります。もちろんゲーム好きな人にとってはそれでいいかもしれません。

しかしこの状態のままでは、ゲーム好きしか関わらなくなってしまうのです。普段私もあまりゲームをやらない方なので、そうやって過ごしていると、あまり任天堂のIPにマリオなどに関わることなくなっているのです。

もちろん、昔も任天堂のゲーム機を代々やってきたぐらいですから、昔のドンキーコング、マリオなど非常になじみが深いです。ただ今大人になって、手に取ってみようというほどの気持ちは起こらないわけです。

これを大きく変えていこうというのが、今の任天堂の戦略です。

  • 任天堂IPに関わる人口を少しでも増やそう
  • そのことによって、ゲーム人口を増やしていこう
  • 任天堂の商品を売ろう

そういう戦略なのです。

始まったばかりのIP戦略

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今これがようやく少しずつ動き出しつつあります。

一つはスーパー・ニンテンドー・ワールドといってUSJ。ユニバーサルスタジオジャパンの中にある任天堂の世界を作ったアトラクション。これが2021年の3月にオープンしました。アメリカのユニバーサルスタジオでも作ることが計画されています。

そこではNintendo TOKYOと言って、お店で任天堂のグッズを売る。それからマリオの映画も公開されるということです。

こうやって徐々にIP戦略ができてはきているのですが、まだまだ始まったばかりかなというところがあります。コロナ禍もあって、ちょっと不運なところはあったのですが、そんなにニンテンドー・ワールド、話題にはなっていないと思います。

このNintendo TOKYOも1ヶ所あるだけで、あちこちあるというものではありません(編注:11月11日には任天堂直営公式ストア「Nintendo OSAKA」が大丸梅田店13階に開店します)。ゆえにそこまでまだ馴染みが出ていないわけです。

これをいかに拡大させていくかというのが、今後の任天堂に求められていることです。

実はキャラクターに対する愛着というのは、ものすごい強いと感じています。なぜかというと(私は子どもがいるのですが)子どもたちってこのIP戦略の一番の肝だと思うのです。

というのも生まれたら、もう1歳とかの段階でアンパンマンを見ます。するとアンパンマン好きだからということで、アンパンマンのおもちゃをどんどん買います。お家はアンパンマンのおもちゃであふれかえってます。

それには最近でいうと、すみっこぐらしなどです。これは例えばレストランと提携したりして、チェーン店のあちこちですみっコぐらしのキャラクターを見るようになります。そしてAmazonプライムで、すみっこぐらしの映画やってたのですが、これを見て、さらにすみっこぐらしのことが好きになる。街中に(好きになってしまった)すみっこぐらしのキャラクターのグッズがあったら、それを買おうということになって、どんどんマネタイズされていくのです。

これほどIPというのは非常に強いです。そして子どもの頃馴染んだということになれば、やはり大人になっても買ってみようかなということになるわけです。

任天堂に関して言えば、必ずしもIPそのもので儲けようとしているのではないと思っています。
あくまでこのIPというのは、任天堂のキャラクターに触れて少しでもなじんでもらおうという戦略だと思うのです。

そこで最終的に「あくまでゲームを売って儲ける」というコアの部分は変わらないと思います。ただ任天堂のゲームに少しでも小さいときから触れることで、よりゲームを手に取りやすくなるというところがあります。

Next: ポケモンはIP戦略の成功例。横展開すればもっと企業価値は上がる

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