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政府、出産一時金“増額”も「焼け石に水」の公算大。“壁ドン教育”などやってるフリばかりな少子化対策に「本気で取り組む気なし」と呆れる声

政府が出産育児一時金に関して、2023年度から50万円程度に増額する方向で検討に入ったと報じられたことが、大きな波紋を呼んでいるようだ。

報道によれば、21年度の平均出産費用は約47万円となっており、現在の原則42万円という出産育児一時金の額を上回っている状況だという。さらに出産時に脳性まひとなった子どもに補償金を支給する産科医療補償制度の掛け金1万2,000円を含めると、約49万円となり、この水準まで一時金を引き上げる必要があると判断されたようだ。

現在、政府内で最終調整が行われており、近く岸田首相が最終判断するとのこと。23年度の増額分は、これまで一時金を支払ってきた健康保険組合などの保険者が負担し、24年度以降は、後期高齢者医療制度からも拠出するという。

出産費用は年々高騰も、一時金の額は据え置かれたまま

厚生労働省による「出産費用の実態把握に関する調査研究」というデータによれば、毎年平均1%前後のペースで増加しているという出産費用。

報道にあった平均出産費用約47万円という数字は、私的病院も含めた全施設での平均のようだが、比較的お金が掛からないとされる公的病院に限定した平均出産費用に関しても、室料差額等を除いても45.2万円と、それでも現在の一時金の額である原則42万円をかなり上回っているという状況である。

さらに出産費用に関しては、施設に従事する職員の人件費などの影響もあり、地域によって大きな差が存在。公的病院に限ったデータでも、出産費用の平均がもっとも低かった佐賀県で35万1,774円だったのに対し、最も高い東京都は55万3,021円と、実に20万円ほどの金額差があるという。

いっぽうで、出産育児一時金が現在の原則42万円という額となったのは、もうかれこれ10年以上も前である2009年のこと。都市部を中心に年々高騰するいっぽうの出産費用に対して、近年ではその制度がまったく追い付いていない状態だったようだ。

そのような状況に対して、今年6月に「私の判断で大幅に増額する」と鼻息荒く表明していた岸田首相。しかし、今回取沙汰されている50万円程度という金額は、これまで実情に合った一時金の引き上げをしてこなかった、いわば“怠慢”分を埋め合わせたにすぎないというのが正直なところ。

今後も、年々上がっている出産費用の上昇に歯止めがかかるという保証はまったくないわけで、今回仮に金額を引き上げたとしても、その翌年以降は実際の出産費用が上回るといった状況に再び戻るのは、火を見るよりも明らかのようだ

“やってるフリ”ばかりな政府の少子化対策

報道などでは、今回の出産育児一時金の増額で子育て世帯の負担を軽減し、少子化対策を強化したいという思惑が政府にはあるようだが、上記のように金額的にも“焼け石に水”といったところなのにくわえ、そもそも出産時の費用はカバーしてくれると言っても、その後に続く育児の様々な負担を考えれば、これでおいそれと子どもを産む人間などいない……といった、至極まっとうな声が大勢を占めているところである。

少子化問題といえば先月28日に松野博一官房長官が、今年の出生数が過去最少ペースだということを受け「危機的状況だと認識している」と発言したように、国力の減退にも繋がるということで、国にとっても由々しき問題のハズ。

しかしながら政府は、過去にその解消のために恋愛弱者への“壁ドン教育”提言を研究会で検討していたこともあったりと、的外れな動きに終始している印象も。そこに今回の件ということで、もはや少子化対策に本気に取り組む気などないのでは……といった失望の声まであがっている状況だ。

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さらに、ここに来て主に子育て世代の間で絶望感とともに受け止められているのが、最近大いに取沙汰されている長野市内にある公園の閉鎖問題の件。市が近隣住民からの「子供の声がうるさい」という苦情に屈し、小学校や保育園、児童センターなどに囲まれたその公園を閉鎖する決定に至ったという話なのだが、その後の報道で実際にクレームを入れていたのが、とある大学の名誉教授を務めているという老人ただ一人だったという。

SNS上からは「こんな世の中じゃ少子化が止まるわけもない」といった声もあがるなど、子育てに対する世間の“不寛容ぶり”を嘆く声も多く出ているこの件。肝心の国や政府が少子化対策に対して本気で取り組むそぶりを見せず、今回の出産育児一時金のような“やってるフリ”ばかりであるところも、こういった子育てに対する世間の冷たい空気を生み出す遠因となっている……とも言えなくもなさそうである。

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