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中国ゼロコロナ抗議デモを扇動したのは米国?司令塔の存在と「第二の天安門」には発展しない理由=高島康司

警戒していた習近平

しかし、今回の抗議運動が起こる数カ月前から、習近平は「カラー革命」が実施される可能性を警戒していた。9月16日にサマルカンドで開催された「上海協力機構(SCO)」の首脳会議で習近平主席は加盟国は「安全保障と発展の利益を守るための努力を互いに支援」すべきだと述べ、世界が「100年にない加速する変化」にさらされ、不確実性と変革の局面を迎えていると指摘した。

そして、ソ連崩壊後の国々で欧米の支援を受け政権転覆を狙うデモについて、「外部勢力によるカラー革命の誘発を警戒し、いかなる口実でも他国の内政干渉に共同で反対する」ことが最も重要であると述べた。これはすでに習近平は中国をを含め「上海協力機構」のメンバー国に「カラー革命」が仕掛けられる可能性を察知していたことを示している。

また7月にはトランプ政権の安全保障担当補佐官であったジョン・ボルトンは、米テレビ番組のインタビューで、個人的に外国政府の失脚に参加したことがあり、そうした事業にはかなりの計画が必要だと述べた。これは2021年1月6日の米議会議事堂占拠事件で、トランプには十分なクーデターの計画がなかったことを批判した文脈で語られたものだ。

インタビュアーがが具体的なことを尋ねると、ボルトンは詳しく説明することを拒んだが、米国が支援する野党の人物が2019年にニコラス・マドゥロ大統領を打倒しようとしたが、治安部隊からの大量の離反を刺激することができなかったベネズエラについて言及しつづけた。

ベネズエラでの取り組みは「成功しないことが判明した」とし、「我々がすべて関係していたわけではないが、不法に選ばれた大統領を覆そうとする野党に何が必要かを見たが、彼らは失敗した」と付け加えた。

このようなボルトンの発言に対し、中国政府はすぐさま反応している。王文斌報道官は、「外国政府を転覆させることは、米国が外交政策を行う方法の骨の髄まで染み込んでいる」と述べた。

「ボルトンの告白は、非常に明白である」と彼は通常のプレスブリーフィングで記者団に語った。「米国の有力政治家がいわゆる「ルールに基づく国際秩序」を喧伝する目的は一つだ。米国が容易に他国の問題に干渉し、自らの意思で政府を転覆できるようにするためだ。ボルトンのような人々が絶対に守りたいのは、まさにこのような「ルール」と「秩序」なのである。しかし、世界の人々はそれを許さないだろう」と王氏は述べた。

絶対に第二の天安門にはならない抗議運動

このように、中国政府はアメリカが仕掛ける「カラー革命」を相当に警戒していた。したがって、今回の抗議運動も事前に察知しており、それが全国的に拡大しないように手を打っていた可能性はある。

そうした経緯から見ると今回の抗議運動は、1989年の天安門事件のように拡大し、習近平体制の基盤を危うくするようなものに発展する可能性は限りなく低いと見て間違いないだろう。海外のチャイナウォッチャーの多くもこのように見ている。

実は中国では、一般に理解されている以上に、抗議活動は日常的であり、また対処も容易なのである。土地を取り上げ開発を強硬する地方政府と農民との対立、環境汚染の反対運動、地方官僚の汚職の告発などだ。過去数十年にわたり大規模な政治的抗議活動が行われており、その対処法は確立されている。

指導者は問題を地方政府の実行のせいにし、「これは地方の党のせいだ」といって厳しく取り締まる。また、デモのリーダーには厳しく当たるが、デモ参加者自身には手を出さないのが普通である。

だから今回の抗議活動も、外部からのコメントで言われているほど国家の対応は厳しくなく、抑圧的でもなかった。むしろ、ソーシャルメディアプラットフォームの制御や抗議者の移動によって、抗議は鎮圧された。その後、活動の報告は少なくなっている。これから第二の天安門事件に発展するとはどう見ても考えにくい。

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