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日本のGDPがドイツに抜かれる当然の理由。成長につながらない防衛費支出増、“周回遅れ”自動車の次を担う産業育たず=斎藤満

自動車はEVで2周遅れ

米国は自動車王国の地位を回復しようと、官民一体でEV体制を進めています。先行したテスラ社は中国での生産で量産体制を築いています。低コストのリチウム電池を確保するうえでも中国進出は有利性を持っています。

その点、日本は携帯用などの小型リチウム電池の開発では先行したものの、自動車用のリチウム電池では後れを取っています。

さらに米国では政府が率先して街に充電スタンドの建設を進め、さらにテスラの充電スタンドをGMやフォードにも開放するなど、官民が協力してEV体制を進めています。EV生産では中国のBYDがテスラとともに実用化が進み、日本市場にも輸出してきています。

これに対して日本はこれまでハイブリッド車で成功したことが災いし、EVへのシフトが遅れています。日産が実用化しているものの、トヨタはまだ実販段階にも至っていません。ガソリンエンジンを前提とした膨大な下請けシステムを抱えているだけに、これらを切り捨てるようなEVシフトは抵抗が大きいのも事実。

ハイブリッド、EV、水素電池、水素エンジン車と手を広げ過ぎた面もあります。国の支援体制も米国に比べると大きく遅れています。米国からは2周遅れ、実販段階に入っているドイツと比べても周回遅れの感があります。

成長につながらない防衛費支出増

4番打者が苦戦している時こそ、他の選手の育成、支援が必要ですが、そんな折に5年で43兆円ないし60兆円もの巨費を防衛費に費やすことは、日本経済には打撃となります。

投下した資金が日本の生産に回る余地は極めて少なく、ほとんどが米国防衛産業からの武器購入にまわります。日本の防衛装備品と輸入が増えてGDPは相殺されるだけで成長には寄与しません。

残念ながら米国から購入した兵器は、修理点検も日本は許されず、米国の専門チームに委ねるケースが多く、技術移転のメリットもありません。日本財政の生産誘発が年々小さくなっている背景には、こうした再生産に回らない武器輸入が増えていることも一因となっています。

しかも、トマホークや戦闘機を大量に購入しても、ロシアや北朝鮮の超音速かつ蛇行するミサイルを打ち落とすことはほぼ不可能とされます。また日本が原発を続ける背景には、いずれ日本が核兵器を作り、保有するためともいわれ、使用済み核燃料の再生施設の建設もこれにつながります。しかし、ロシアが追い詰められれば核兵器の使用を示唆するように、核兵器を保有するだけではもはや抑止力になりません。

トランプ前政権以来、防衛費をGDPの2%に向けて増やすよう圧力がかかり、岸田政権も思い切った増額に踏み切りましたが、予算の拡大で了解を取り、その使い方、支出の先は日本が独自に決められればまだやりようがあります。ただ米国から兵器を購入するのではなく、日本の防衛産業に資金を回し、日本の生産に寄与すれば、多少なりとも成長に寄与できます。

Next: 日本生き残りには米国も巻き込んだ“新兵器”開発が必要か

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