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米銀行を破綻に追い込んだツイッター投稿の破壊力。AIが主導する未来のSNSはもっと怖い=高島康司

「ツイッター」への投稿が銀行を破綻させた経緯

まずは、「シリコンバレー銀行」の破綻に至る「ツイッター」の投稿の経緯を見てみよう。何があったのか、具体的に分かるはずだ。

シリコンバレーでは非常に人気の高い「The Diff」というフィンテック系のメルマガがある。これは、ブライアン・ホバートというフィンテックの専門家が書いているものだ。シリコンバレーでビジネスをしているものなら大抵は購読しているという。2月23日、ホバートは次にようにツイートした。

「今日のニュースレターにも書いてある。シリコンバレー銀行は、前四半期、資産の時価に基づき、技術的に債務超過に陥り、現在185:1のレバリッジになっている」

そして、彼はツイートの中に、メルマガからの数段落を入れた。このツイートは大きな反響があり、瞬く間に拡散した。その後、「シリコンバレー銀行」が債務超過にあると信じたピーター・ティール(「PayPal」創業者の1人)のような「シリコンバレー銀行」に口座を持つ大金持ちが預金を引き出した始めた。これがまた「ツイッター」で報じられると、預金の引き出しが殺到して、資金不足となった「シリコンバレー銀行」は破綻したのである。

「シリコンバレー銀行」の経営はよくはなかったものの、ホバートのツイートが引き金となった預金引き出しの殺到(取り付け騒ぎ)がなければ、この銀行はいまでも通常の営業を続けており、破綻はしなかったのではないかと見られている。

いま「シリコンバレー銀行」は「米連邦預金保険公社(FDIC)」の管理下にある。もし「FDIC」が管理に乗り出さなければ、アメリカのスタートアップ企業全体の20%以上が7日間で崩壊する可能性があった。危機一発の介入である。

2008年の「リーマン・ショック」にはなかった特徴

これが、「シリコンバレー銀行」が破綻した経緯だ。いまネットでは今回の「シリコンバレー銀行」の破綻と2008年の「リーマン・ショック」を比較する記事が多いが、2008年当時には見られなかった特徴が、今回の破綻劇にはある。それは、SNSの影響力の大きさだ。

2008年当時、「ツイッター」や「フェイスブック」は存在していたものの、2023年のいまと比較すると、その影響はまだ限定的だった。SNSのアクセス数はまだまだ少なく、その投稿が社会現象を引き起こすようなことはまずなかった。現在、1日のツイート数は5億件を突破しているが、2008年当時は5,000件から1万件程度で推移していた。

SNSの社会的影響力が増大してくるのは、スマホの契約台数が急速に拡大する2009年頃からだ。2009年の「ティーパーティー運動」、そして2010年から11年にかけては、「オキュパイ運動」や「アラブの春」のような社会運動の組織化と拡大にSNSが大きく貢献した。

このように、「リーマン・ショック」が起こった2008年と2023年の現在とでは、SNSがもたらす影響力には大きな違いがある。もし「リーマン・ショック」の時に現在と同じ規模のSNSがあったとすると、「リーマン・ショック」ははるかに巨大な金融危機と社会動乱を引き起こしていたかもしれない。

Next: SNSが起こした「ゲリラ豪雨」で破綻、どんな銀行でも起こり得る

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