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米銀行を破綻に追い込んだツイッター投稿の破壊力。AIが主導する未来のSNSはもっと怖い=高島康司

「ゲリラ豪雨」としてのSNS投稿

それというのも、SNSでは人々の不満が拡散し、そのメッセージのやり取りが爆発的な社会運動の起爆剤になりやすいからだ。

当然かも知れないが、SNSのメッセージのやり取りが激しい社会運動を引き起こすさまは、ゲリラ豪雨のようだと言われている。ゲリラ豪雨は、上空の大気が不安定になって発生した積乱雲が原因となって起こる。通常だと、積乱雲は10分くらい続く夕立を引き起こすだけで、1時間に200ミリというような集中豪雨並のゲリラ豪雨の原因になることはない。だが、気象庁の予測を完全に裏切り、夏の熱波を冷やしてくれる夕立が、突如としてゲリラ豪雨に発展し、洪水を引き起こしたり、都市の交通を麻痺させる自然災害を引き起こしたりする。

コロナのパンデミックの最中、欧米を中心に荒れ狂ったロックダウン反対の抗議運動は、ちょっとした小規模の集会やデモにしか過ぎず、夕立程度の雨になるはずだった積乱雲が、予想を越えたゲリラ豪雨を突如発生させた典型的な例だ。

「フェイスブック」の創立者マーク・ザッカーバーグは、SNSで行われる自由で規制のない対話こそ、あらゆる問題を解決するためのカギになると信じていたようだ。対話の参加者が知恵とアイデアを出し合い、さまざまな問題の解決を図るというわけだ。規制のない自由な対話の場では、異なった思想や宗教を持つ者たちが相互理解が深まることで、宗教や思想による対立を乗り越え、相互に信頼できる安定した関係ができるはずだと考えた。要するにSNSこそ、民主主義の花形になるはずだと信じていたのだ。

しかし、状況はこれとは大きく異なっている。たしかにSNSは、多くの人が互いの違いと対立を乗り越え、問題を解決する機会を提供するかもしれない。けれども、それは規制のない巨大な井戸端会議のようなものだ。そこでは、あらゆる話題が匿名で話し合われる。

さらにSNSには、投稿されたメッセージの内容を世界共通の基準で審査するような組織は存在しない。その結果、普通のコミュニケーションでは不適切として抑圧され、おおよそ話題にすることのできないような内容も出てくる。人が抑圧しているあらゆる否定的なものが噴出する場所こそ、実は現在のSNSの実態だ。ザッカーバーグはあまりに楽観的だった。ストレスのような、人の抑圧された否定的なエネルギーの強さが現れることを理解していなかった。

このようにSNSは、人々の怒りとストレスを増幅し、それを予想を越えた規模の社会現象を発生させた。それはまさにゲリラ豪雨のように、予期せず起こった。2021年1月6日に首都ワシントンの連邦議会議事堂を暴徒が占拠した事件は、SNSが引き越した社会現象の好例だ。

SNSのゲリラ豪雨で破綻、どんな銀行でも起こり得る

このようなゲリラ豪雨のようなSNSが引き起こした最初の銀行破綻が、今回の「シリコンバレー銀行」だったのだ。多くの人々が納得する説得的な銀行破綻のストーリーをツイートをすると、それは今回のように瞬く間のうちに拡散して預金引き出しのラッシュを引き起こし、銀行を破綻させる。実際の経営状態に関係なく、どんな銀行にも起こりかねないことだ。

いまほどSNSの影響力がなかった「リーマン・ショック」時の2008年当時とは、根本的な違いだ。SNSの投稿の拡散が銀行を破綻させるほどの影響力を持ち得ることは、だいぶ以前から想像できたことだ、だがいま、それが初めて現実に起こるのを目にして、人々はSNSが引き起こす金融危機が、可能性としては十分にあり得ることを改めて認識していることだろう。これからの金融危機の新しいひとつの形態になるかもしれない。

Next: AIが主導する未来のSNSはもっと怖い

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