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植田日銀「緩和継続」表明も遠からず金利上昇?長期金利は予想短期金利の平均で決まる=塚崎公義

実際には予想短期金利の平均より少し高くなるのが普通

基本的な考え方は上記ですが、実際の長期金利は人々の予想する短期金利の平均より少しだけ高くなるのが普通です。

それは、貸し手が「次は貸さない」という権利を放棄する必要があるからです。

貸し手が1年の貸出を10回繰り返す予定だとします。その場合には、途中で資金が必要になって「もう貸さない」と言うかも知れません。借り手が倒産しそうになれば、やはり「もう貸さない」と言うでしょう。

しかし、10年契約で貸してしまえば、途中で「返してくれ」とは言えません。そこで、長期金利が予想短期金利の平均と同じであれば、貸し手は短期貸出を選んでしまうため、固定金利での貸借契約は成立しないのです。

固定金利が予想短期金利より高ければ、「途中で返してもらう権利を放棄するのは嫌だが、高い金利が受け取れるなら契約しても良い」と考える貸し手が出てくるので、契約が成立する、というわけです。

借り手としては、高い金利を払うのは嫌でしょうが、「もう貸さない」と言われるリスクを考えれば、多少高くても固定金利で借りておいた方が安全だ、と考える借り手も少なくないようです。

以上が理屈ですが、最近では銀行間の長期資金の貸借が行われることは稀で、国債の売買で資金がやりとりされています。長期で貸したい銀行は長期国債を買い、長期で借りたい銀行は持っている長期国債を売るのです。

長期国債を売って資金を手に入れるのは、長期国債を持ったまま長期の借入をするのと同じことになりますから。そして、その際に売買される国債の利回りが長期金利となっています。

そして、日銀が大量の国債を買っているので、長期金利は人々が予想する短期金利の平均より低くなっているようですが、そのあたりの話は、別の機会に。

(筆者注:本稿は厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。)

image by: silvaner / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年4月14日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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