23年5月10日、大手家電メーカーのパナソニックが決算を発表しました。23年3月期は増収増益、今期の24年3月期決算は過去最高益を達成する見込みです。この好調の波に乗って、今から投資するのはアリなんでしょうか?今回はパナソニックの事業内容に焦点を当てて分析してみます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
好調を支える3つの理由
23年3月期の決算を詳しく見ると、売上は13%増である一方で、営業利益は▲19.3%、当期純利益は4.0%増と好調なのか、不調なのか判断が難しい決算となりました。
しかし、24年3月期は売上1.4%増、営業利益49%増、当期純利益が31.8%増の予想であり、当期純利益が過去最高となる見込みです。
その主な要因は要因は3つです。
<理由その1. 欧州で家電が好調>
欧州のA2W(ヒートポンプ式温給湯油暖房機器)が好調です。
A2Wは、大気中の熱を集めて温水をつくり出し、住宅に循環させることで暖房するシステムです。化石燃料を用いた暖房機器に比べてCO2排出量を抑えることができ、環境への負荷が少ないため、欧州で需要が伸びています。
<理由その2. 米国でEV向け電池の需要拡大>
アメリカで生産されている、EV向けの車載電池や各種部品の需要が増えることが業績にプラスとなる見込みです。手のひらサイズの電池ですが、車全体を動かすほど強力なパワーを持ち、主にテスラなどで使用されています。
<理由その3. 一時的な補助金収入>
米国インフレ抑制法による補助金収入が800億円計上される予定です。(24年3月期の営業利益見通しは4,300億円)なお、補助金の対象となるのは米国で生産しているEV向け電池です。要因2と関連がある要因ですね。
このようにパナソニックは主に欧州、米国で需要が伸びているため好調なのです。では本当に投資して良いのでしょうか?
事業内容をもっと深堀してみましょう。
パナソニックは家電メーカーとは言えない?
あなたはパナソニックと聞いて、どんな会社だと認識していますか?
冷蔵庫、洗濯機、美容機器など高級家電メーカーという想像をされるのではないでしょうか?
しかし、現在は家電が主力とは言い難い状況です。実は冷蔵庫を例にとると、中国のハイアールグループに日本国内のシェアですら抜かれているのです。
出典:日経XTECHより作成
しかし、代わりに伸びてきているのが、EV(電気自動車)関連です。2018年と比較して、車関連の利益割合が15%伸長しています。
出典:各年度有価証券報告書より作成
※利益内訳の算出方法について
2018年算出方法 EV関連=オートモーティブ事業の利益 個人/法人電機=コネクティッド事業+エコソリューション事業+アプライアンス事業の利益
2023年算出方法 EV関連=オートモーティブ事業+インダストリー事業+エナジー事業の利益 個人/法人電機=くらし事業+コネクト事業の利益
なぜ、車関連の利益を伸張できたのでしょうか?
理由はテスラの主要取引先になれたからです。2014年に巨大EV電池工場を建設することで合意するなど、テスラのEVに使われる電池を一手に担っていました。
そして現在もEV関連事業がパナソニックの業績を引っ張っているのです。