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景気「緩やかな回復」と誤認する政府日銀の罪。無節操な“お友達支出”を続ける余裕はない=斎藤満

政府日銀は現在の我が国の景気を「緩やかな回復」「緩やかに持ち直し」と見ていて、景気対策の必要性を感じていないようです。しかし、政府日銀の景気認識には大いに疑問があります。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年5月17日の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

景気は緩やかな回復ではない

医者は正しい診断なくして正しい処方はできません。景気判断も同様で、正しい景気判断がなければ正しい景気対策もできません。

政府日銀は現在の我が国の景気を「緩やかな回復」「緩やかに持ち直し」と見ていて、景気対策の必要性を感じていないようです。しかし、政府日銀の景気認識には大いに疑問があります。

まず政府の景気認識にはそもそも矛盾があります。4月の「月例経済報告」をみると、景気の先行きについて「持ち直しが期待される」とあります。これは、現状が落ち込んでいるか、弱い状況にあるとの前提からくる言葉です。現状が回復過程にあるなら、「持ち直し」との認識にはなりません。因みに現状についても「緩やかに持ち直している」としています。

日銀の「展望リポート」でも、現状は資源高の影響はあるものの持ち直していると評価。先行きについても年度半ばまでは海外経済の弱い動きで下押しが予想されるものの、ベントアップ需要に支えられて緩やかに回復してゆくと見ています。

つまり、政府日銀ともに足元の景気は「持ち直している」と見、先行きも緩やかに回復を続けるとしています。

ところが、内閣府が作成している「景気動向指数」は、景気の現状を「足踏み」と客観評価しています。そして景気先行指数、一致指数、遅行指数の動きは、日本経済はすでに「景気後退」に入っている可能性を示唆しています。

例えば、景気先行指数(CI)は21年6月の103.9をピークにその後は低下傾向で、足元3月は97.5です。一致CIは昨年8月の100.6をピークにその後は低下傾向で、この3月は98.7です。そして遅行CIは今年1月の100.3から3月は99.4となっています。

昨年夏をピークに、景気は後退局面にあることを示唆しています。

物価高が消費を圧迫

政府日銀も「持ち直し」という言葉を使っている分、景気を弱めに見てはいます。

その弱い原因は、輸入資源高と円安で日本の交易条件が悪化し、所得が海外に流出していることがあります。その輸入コスト高を企業が消費者に価格転嫁していることで、個人消費が弱くなっていることが足かせになっています。

ちなみに、この3月の勤労者世帯の可処分所得は物価上昇を差し引いた実質で前年比5.0%の減少となり、消費も実質で4.7%減となっています。コロナの感染一服でベントアップ需要が出ていたり、政府の全国旅行支援、電気ガス代の補助などのプラス要因があるものの、物価高で全体の消費が抑圧されていることが景気の足かせになっています。

所得の海外流出による景気悪化にはなかなか対応が難しい面はありますが、コスト高の石油関連に対して、省エネで需要を抑え、所得の流出を抑える努力をせずに、政府が補助金を出している分、電気代の支出が減りません。ガソリン高の企業補助も同様で、所得流出の原因を抑えられていません。むしろ日銀は金融緩和強化でインフレを助長しています。

Next: 日銀のインフレ促進策は逆効果。必要なのは需要創出策

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