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米デフォルトと日米株価急落に備えよ。レイ・ダリオの歴史サイクルから見た「米債務上限問題」の深刻度=高島康司

<(2)成熟期>

●ステージ4:過剰期間

反対に過渡期になると、次のような特徴が一般的になる。

・人々が労働を避けるようになり生産性が低下
・金と時間を贅沢やレジャーに費やし、投資や研究にはあまり時間を費やさなくなる
・借金は高い生活水準を維持するために利用され、それがバブルを引き起こす
・多額の軍事費
・国の返済能力の低下
・富と機会の格差は拡大し、階級間の対立は拡大

この時期の優れたリーダーとは、自制の必要性を理解し、部下に厳しい規律を守ることを要求できる人物。しかし、多くの国ではそれを実行する勇気のあるリーダーはほとんどいない。

ほとんどの国は、豊かになった後は退廃的になる。例;ローマ帝国のネロ、フランスのルイ14世。

<(3)衰退期>

●ステージ5:財政悪化と紛争
過渡期のマイナスの特徴が克服されす、持続すると「クラシック・トキシック・ミックス」と呼ばれるもっとも危険な特徴があらわになる。

・クラシック・トキシック・ミックス

1)国も国民も財政状態が悪化する
2)国民の社会的格差が拡大し、社会層で価値観も異なってくる
3)深刻なマイナスの経済ショック:バブル崩壊、自然災害、戦争などの同時発生

つまり「クラシック・トキシック・ミックス」とは、国と国民の財政が悪化し、社会的な格差が大きくなっているときに、バブルの崩壊、不況、自然災害、戦争などのネガティブな出来事が重なることを指す。そして、これが発生すると次のようなことが起こるとされる。

・クラシック・トキシック・ミックスで拡大する格差

まず、「クラシック・トキシック・ミックス」の影響下で社会経済的な不平等はさらに拡大する方向に動く。貧困層の怒りが革命や内戦に発展するのを回避するためには、政府は所得の再分配政策を実施し、貧困層を懐柔しなければばならなくなる。そのために、多額の国債を発行して、借金を増大させる。

だがこれは、結局通貨の増刷であり、これを行うと通貨の価値は下がり続け、状況はさらに悪化する。また、分配された資金は市場に流れ、これがバブルを生むからだ。バブルは富裕層をさらに豊かにして、結局は格差を拡大させる。

社会的格差を解消し、平和と繁栄の期間を持続するためには、借金をする場合でも、それを生産性の向上につなげる必要性がある。これは部分的には、貿易協定、グローバリゼーション、人間に取って代わるAIやロボットの導入など、「社会にとって良いと思われる」政策やテクノロジーの導入として実行されることも多い。だが、これは裏目に出る場合もある。

そして、政府が生産性を上昇させる政策を導入できなければ、政府財政は限界に達し破綻する。すると政府が必要な予算の支出ができなくなるので、システムは崩壊する。

政府がこれを避けるためには、国債のさらなる発行と同時に、増税の実施も必要になる。しかし、社会経済的不平等が大きく、景気が悪い状況での増税や支出の増加は、内戦や革命の先行指標となる。貧富の差が大きいと、コミュニティ間で意見が合わなくなり、緊張は一層高まる。

一方政治家は、社会の平均値だけを見る傾向がある。全体の平均値は、苦しんでいる人の数とその力ほど重要ではない。平和と繁栄を持続させるには、社会がほとんどの人々に利益をもたらす程度の生産性を備えていなければならない。

だが、それに失敗すると、敗者の怒りはシステム全体を脅かすことになる。その結果、社会経済的不平等が大きく、多額の負債があり、収入の減少が最も深刻な地域では、最も大きな紛争が発生する可能性が高くなる。

Next: 生々しい戦いが始まる?衰退期の特徴に当てはめると…

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