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米デフォルトと日米株価急落に備えよ。レイ・ダリオの歴史サイクルから見た「米債務上限問題」の深刻度=高島康司

・衰退期の特徴

さらに衰退期には、次のような特徴も顕著になる。

a)硬直化した官僚制:繁栄の時代には効率的であった官僚制は、この時期になると硬直化する。

b)ポピュリズムと過激主義:ポピュリズムは、強い個性を持ったカリスマ的リーダーが「人民」、つまり一般人を守るために登場したときに起こる。貧困層の価値観を代弁する人物だ。

c)階級戦争:あるグループが別のグループを悪者扱いし、スケープゴートにするときに始まる。これは大量虐殺や投獄などにつながる可能性がある。ある階層のメンバーは他の階層を固定的な観念で見る。

d)パブリックドメインにおける真実の喪失:二極化とプロパガンダの増大により、何が真実で何が真実でないのか誰も分からなくなる。もっとも過激なグループはメディアと協力して支持を獲得し、反対勢力を壊滅させる可能性もある。一方メディアは、自分たちの目的にそぐわない人を攻撃する。人々は自分の生活を破壊されたくないため、声を上げることを恐れるようになり、言論の自由が打撃を受ける。

・生々しい戦いが始まる
こうした状況に至ると、生々しい戦いが始まる。人々が大義を、現行の政治制度よりも評価するとき、法律は危険にさらされる。反乱者が政治体制の維持よりも勝利を重視すると、本格的な争いや反乱が始まる。

ステージ5の後半では、システムを制御する者がそれを武器として使う。一部の過激なグループは、権力を行使するために民兵組織を創設する。さらに抗議活動はますます暴力的になる。

死者が出た場合、戦いはステージ6まで続く可能性が高い。紛争を解決するシステムが機能しなくなると、ステージ5がステージ6に移行する。

最大の問題は、いつシステムが壊れるのかということだ。民主主義にとっての最大のリスクは、効果のない断片的で敵対的な意思決定をすることだ。これは悪い政策につながり、最終的には、秩序を再確立することのできる強力で有能な指導者を望む人々を代表するポピュリストの独裁者による革命につながる。

●ステージ6:革命

こうした状況が続くと、最後には必ず内戦が起こる。内戦は革命へと発展する。そうした兆候はいたるところに現れる。革命が起こると、新たな国内秩序が確立される。システムが多数派にとって機能しなくなったとき、革命が起こり、システムが変わるのだ。

成功した革命も失敗した革命も、すべて同じ理由で起こった。それは、より多くの富がより適切に再分配され、成功と繁栄を約束できるシステムの形成の失敗である。

革命は常に上位中産階級によって主導され、彼らがしばしば擁護すると主張する「人民」によって主導される。革命家はカリスマ性があり、他の人々とうまく協力することができる。

革命の主な理由は富の格差であることが多いが、自由の制限や権力争いなど他の理由も考えられる。ときには、他国が革命に影響を与えるために革命に介入することもある。

ほとんどすべての内戦には外国の干渉があった。革命の始まりは明らかではないが、プロセスは明らかだ。内戦における最良の指導者は、インスピレーションに満ちたリーダーだ。彼らは戦いに勝つために十分残忍であり、人々を自分たちの大義に結集させるために十分なカリスマ性を持っていなければならない。

(4)覇権を転換させる大戦争
このように、覇権国で内戦から革命が起こって国内が混乱すると、それは発展しているライバルにとって、覇権を転換させる戦争を引き起こす絶好の機会になる。過去500年の歴史では、これは大戦争になり、戦争の後には新しい覇権国が台頭した。もっとも最近の覇権転換の事例は、1930年から1945年までの大恐慌から第二次世界大戦に至る過程である。この過程で、大英帝国の覇権は失墜し、1945年以降はアメリカの覇権となり、現在まで続いている。

Next: 今回の債務上限引き上げ問題は深刻。現在のアメリカの段階は…

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