米国の債務上限引き上げ問題がかなり厳しい状態になっている。本当に下手をすると、デフォルトさえも覚悟しなければならないのかもしれない。さらには、この問題を歴史的な視点から見ると、別な側面の深刻さが見えてくる。最近になって改めて注目されている、レイ・ダリオが昨年の4月に発表した『Changing World Order』という本をもとに解説したい。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
歴史的に見た債務上限引き上げ問題の深刻さ
いま注目の本『Changing World Order』から見た債務上限引き上げ問題の深刻さについて解説したい。
債務上限引き上げ問題がかなり厳しい状態になっている。本当に下手をすると、デフォルトさえも覚悟しなければならないのかもしれない。
23日午後、マッカーシー米下院議長(共和)は、米国のデフォルト回避に向けたバイデン政権との連邦債務上限問題を巡る交渉について、妥結にはまだ至っていないと述べて連邦議会議事堂を後にした。また、共和党交渉担当者の1人であるグレイブス下院議員は同日、政権側の担当者との2時間に及んだ協議の数時間後、さらなる会合は予定されていないと語り、話し合いが膠着状態にあることを示唆した。
また、前大統領のトランプは、共和党に対し「自分たちの望むものをすべて手に入れない限り、デフォルトを許容するべきだ。折れてはいけない」と迫った。トランプを支持する共和党内の強硬派も同じ見方をしており、バイデン政権の案に妥協するくらいならデフォルトを選ぶとしている。
このような状態なので、もし本当にデフォルトするようなことにでもなれば、米国債とドル、そして株価は同時に下落し、金利は急騰して米経済はほぼ間違いないく不況に入ることになるだろう。
債務上限引き上げ問題はさらに深刻
しかし、債務上限引き上げ問題を歴史的な視点から見ると、この問題の別な側面の深刻さが見えてくる。いまレイ・ダリオが昨年の4月に発表した『Changing World Order』という本がここにきて注目されている。
ちなみにレイ・ダリオは、世界最大のヘッジファンド、「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者である。成功哲学のほか、独自の視点で分析した歴史や経済の本を複数出版している。そのうちのいくつかは、ニューヨークタイムスのベストセラーにもなっている。『Changing World Order』はレイ・ダリオの最新作だ。これは、歴史の反復するサイクルをもとにして、アメリカの覇権の衰退と、中国の台頭の必然性を説き、それを回避する方策を提案した本だ。
『Changing World Order』によると、覇権の転換には250年のサイクルがあり、その移行期は10年から20年だという。そして移行期は、新興勢力との対立期になるとしている。
ちなみに、覇権国の盛衰と転換を決定するパラメーターには次に8つがあるとしている。
<盛衰を決定する8つのパラメーター>
1)教育
2)テクノロジーとその開発力
3)世界市場における競争力
4)生産力
5)世界貿易のシェア
7)軍事力
8)資本市場の金融力と準備通貨の強さ
よい教育は高いテクノロジーと開発力をもたらし、国際的な競争力が上昇する。その結果、生産力は高まり世界貿易のシェアも拡大する。それは大きな軍事力の基礎となり、その国の金融センターがグローバルなセンターになる。その結果、その国の通貨が基軸通貨になる。
これらの8つのパラメーターは上昇期には相互に強め合いながら一層強くなるが、下降期には逆になる。