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なぜ違法な臓器移植が野放し状態?ドナーが圧倒的に足りぬ日本で“金儲け”斡旋仲介が横行する闇=神樹兵輔

もう1つの「臓器移植法」における違反事件も

実は、こうした臓器移植を巡っては、遡ること2011年にも別の事件が起きていました。

これは、東京都江戸川区の内科医院の院長が、自身の人工透析治療を負担に感じ、暴力団関係者に多額の紹介料(2人分で1,800万円相当)を支払い、生体ドナー(臓器提供者)の紹介を受けた――という事件でした。

赤の他人のドナーとの間で、虚偽の「養子縁組」の届け出をして「親族」を偽装していたことが発覚し、日本の臓器移植法の「臓器売買の禁止」容疑で逮捕・起訴された事件だったのです。

この事件では、関係者9人が逮捕され、5人が実刑判決、4人が執行猶予付きの有罪判決を受けています。

暴力団関係者までが臓器移植に関わって高額のシノギにしようとしていたことが判明し、世間にショックを与えたものでした。

このように、「臓器移植」は、臓器不全者にとっては、自らの延命のための手段として、非常に切実な救命策となっています。

ゆえに、そうした悩みや弱みに付け込んで、法外な費用で、臓器移植の斡旋を図ろうとする輩が次々現れるのです。

日本ではドナーが圧倒的に足りない

今回は、冒頭の「臓器移植の無許可斡旋」の違法行為が、NPO法人代表者の逮捕によって表面化しましたが、臓器移植斡旋の闇ルートは他にもまだまだあり、発覚していないだけ――という疑惑がつきまとうのです。

特に海外渡航にまつわる臓器移植には、その疑いが極めて濃厚といえるでしょう。

日本では、臓器移植を希望しても、ドナーの数があまりにも少なく、それが叶えられる確率は日本での希望者1万6,000人中、年間たったの2%しかないからです。移植件数は世界でも最下位レベルなのです。

ドナーが見つかるまでに、10数年待たされ、移植手術待ちのうちに、命が尽きてしまう患者が大勢出ています。

1997年から2022年までの日本国内での臓器移植は7,071件ありますが、移植待ちのうちに亡くなってしまった患者数はその数以上の7949人にのぼります。

公益社団法人「臓器移植ネットワーク(JOT)」によれば、移植手術待ちの患者さんが、1週間毎に8人ずつ亡くなっている状況――というのでした。

海外渡航を企図しての、死体臓器移植のみならず、貧しい国の人々からの「生体臓器売買」を誘発する要因がここにあるわけです。

2021年の人口100万人あたりの臓器提供者数の各国比較によれば、トップの米国が41.6人、次いでスペインの40.8人が上位に並び、お隣の韓国が8.56人で、日本は0.62人と非常に少なくなっているのです。

これでは、救える命が救えません。

術後生存率の高いといわれる中国の公式発表の移植件数1万件で比較すると、中国は人口14億人のため、人口100万人あたりの全体で見ると0.7人と、日本並みの低い数字になっています。

2008年の国際移植学会では、自国での臓器移植で救える命への取り組み強化を求めた「イスタンブール宣言」が採択されています。

「臓器移植は自国内でまかなうこと」が世界のスタンダードで、海外に渡航して移植を受ける「移植ツーリズム」は禁止されるべき――というのが世界の共通認識になってきているのです。

いずれの国でも、貧しい人々が自分の臓器を売る「臓器売買」を誘発し、犯罪グループ収益の温床となりかねない実情があるからです。

Next: どうすれば、日本での臓器移植数を増やすことができるのか?

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