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どうしてもNATOを巻き込みたいゼレンスキーの胸の内。ウクライナ内の“原発攻撃”まで計画か=高島康司

ヨーロッパの極右勢力の台頭

さらに、こうしたNATOの弱気な状態に拍車をかけているのが、ヨーロッパ諸国の状況だ。

ウクライナ戦争とヨーロッパの不況により、EUやNATO諸国で、将来政権交代がある可能性もある。ウクライナ戦争と過剰な国防費に対しては、イギリスの労働党のような左派と、ドイツのAfDやフランスの国民戦線のような右派が反対している。

フランスの拡大した暴動以降、フランスでもその他のヨーロッパ諸国でも、移民排斥を主張する極右の台頭が一層著しくなっている。もしフランスのマクロン大統領が早期に退くようなことでもあれば、極右「国民戦線」のルペン党首が大統領に就任する可能性がある。

総じてどの国でも極右は、反EU・反NATOである。プーチンの主張する多極型の世界秩序を支持しており、ウクライナ支援にもかなり消極的で、ロシアとの政治交渉による決着を優先している。

インフレと不況、そして国内の不安定さに疲弊した国民は、右派と極右の主張に引き寄せられている。彼らの政治的な影響力が強くなるにしたがって、NATO諸国がこれまでのようなウクライナ支援を継続するのは難しくなるだろう。

さらに、これらの要因に加え、アフリカや中東からの移民による社会不安は、最近のフランスの暴動のように、社会がかき回されれば安定した統治を危うくする例となった。NATO諸国は、ロシアに脅かされるのではなく、国内の脅威に対処しなければならなくなる。

つまり、ヨーロッパの国民は、ウクライナの戦争が自国の安全保障を損ない、経済的大混乱を引き起こしていることに気づき始めているのだ。

フランスの暴動は、ヨーロッパではすべてがうまくいっていないという警告の一撃になった。この暴動は、同化していない北アフリカや中東のコミュニティーに対処するフランスの大きな問題に関係する内政問題とみなされるかもしれないが、暴動はヨーロッパにおける深いフラストレーションとヨーロッパの政治が極右にシフトしていることを表している。

それに加えて、多くのヨーロッパ人が長い間、アメリカからより独立したヨーロッパを望んできたという事実もある。実際、マクロンとパートナーであったドイツやイタリアでさえ、NATOにつながらない欧州司令部の設立を約束していた。アメリカの支配から自由になりたいという国民の支持もある。ウクライナは、ワシントンの命令に従うように彼らを追い詰めた。したがって、ワシントンにいわば強制された格好のウクライナ支援に対するヨーロッパ国民の反発はある。右派や極右の台頭とともに、この反発が表面化する時期に入った。

バイデン政権は方針転換に動くか?

こうした状況で、これまでかたくなにロシアとの政治交渉を避け、ロシアの弱体化を目標にしたウクライナ戦争の長期化を推進してきたバイデン政権だが、「NATO首脳会議」とタイミングを合わせるような形で、ウクライナの方針を転換させる動きも見せている。

周知のようにバイデン政権は、アメリカの世界覇権の永続化を目標にする「外交問題評議会(CFR)」が実質的に作った政権だ。閣僚の大半が「CFR」のメンバーである。「CFR」は、軍産複合体と金融産業、そしてネオコンが結集した組織である。

この4月に国連安全保障理事会出席のためにニューヨークを訪れていたロシアのラブロフ外相に、「CFR」のリチャード・ハース会長が会っていたことが、7月に入ってから分かった。ハース会長は4月以降もほぼ毎月ロシアと接触し、ウクライナ戦争の落としどころを探っている模様だという。

バイデン政権の対ロシアと対ウクライナ政策を実質的に立案している機関である「CFR」の会長が、ロシアと直接接触するということは、バイデン政権が方針を転換し、ロシアとの政治交渉でウクライナ戦争に決着をつける方向に転換しつつある可能性も示唆しているかもしれないと大きな話題になっている。

Next: ウクライナはサボリージャ原発の攻撃を計画していた?

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