UAEやカタールの「自国民が1割」という状況は何の参考にもならない
米国に言われてバイデンの「ガキの使い」としてサウジアラビア・アラブ首長国連邦・カタールの3カ国を訪問した岸田首相は、さっそく訪問先の状況を引き合いに出し、アラブ首長国連邦は人口1,000万であるものの自国民は100万人で900万人の外国人と共生しているとか、カタールも人口300万人であるものの自国民は30万人しかいないなど、外国人を大量に受け入れて国を成り立たせているという事例を口にしています。
しかし、この2国は極めて特異な事例。自国民と外国人労働者は完全に別の暮らしを行っており、移民受け入れで人口を維持する「共生」とは似ても似つかぬ状況を継続中。いったい現地まで訪問して何を見てきているのか、呆れかえるところです。
石油の利権に繋がる自国民は、本邦では見られないほどの上級国民として優雅な生活をしているものの、それ以外の外国人労働者は極度の長時間労働を強いられ、まさに搾取と虐待を広範に受けているのが実態です。
カタールの実態はワールドカップ実施で外国人労働者を使い捨て
とくにすさまじい惨状を露わにしているのが、カタールです。サッカーワールドカップの招致が決定した2010年以降、そのスタジアム建設・地下鉄の建設・道路拡張といった都市大改造のために、アジアやアフリカからの外国人労働者が大量に投入されました。
そのため数値的には自国民30万人に対し、外国人260万人という、極めていびつな状況が示現することとなっています。
2020年のワールドカップ実施までは都市部のさまざまな建設に外国人労働者が起用されていますが、その間、労働者が大量に死亡したことも大きな問題になっています。
こうした外国人労働者は自ら志願してこの国にやってきているところがなんとも不思議な状況ですが、高層ビルが立ち並ぶ首都ドーハから50キロ以上離れた砂漠の真ん中に外国人労働者向けの寮が設置され、日常的には自国民がこうした労働者を目にしない配慮も施されていると言います。
そしてワールドカップカタール大会が終了してみると、こうした外国人労働者は一斉に雇用主から解雇と帰国の要請を受けており、事態は岸田首相が口にした表層的な共生から粛清、あるいは強制帰国のステージにシフトしようとしています。
こうした最悪のビジネスケースを現象的な数字だけ取り出して「外国人との共生」などと呼ぶなら、岸田首相が標ぼうする「新しい資本主義」はマルクスの資本論にさえ登場しなかった猛烈な外国人労働搾取社会を国の中心政策にしてしまうのではないかとさえ危惧されるところです。