経営再建中の中国不動産大手・恒大集団がニューヨークの裁判所に破産手続きを調整する連邦破産法15条の適用を申請。不動産バブル崩壊で中国版のリーマン・ショックが起きるとの声も聞かれます。しかし、この一方で鮮明化しつつあるデフレ大国化の問題は、不動産バブル崩壊よりもはるかに深刻な状況を世界経済にもたらす可能性が出てきています。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2023年8月20日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
いよいよ中国が「デフレ国家」へ
中国の7月の物価統計で、消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)がともに前年同月比で下落。2020年以来の低水準となり、いよいよデフレ国家に転落かという観測が高まっています。
月次CPIは、食品とエネルギーを除くコアで0.8%増と1%を下まわる始末。PPIもGDPデフレーターもマイナスとなっています。
21世紀に入ってからは高度成長を謳歌し、指標が発表されるたびに実は鉛筆ナメナメ数字を盛って来たのではないかと言われてきた中国も、このデフレ状況を隠すことはできない状況に追い込まれていることが窺われます。
新型コロナが大感染していた時期には、こうしたネガティブな数字が出るのは驚くべきことではありませんでした。
しかし、この新型コロナ発生後、国民に湯水のように給付金をばらまき史上最大の緩和を実現してみせた米国は、案の定すさまじい「インフレ」に直面しており、ほかの主要国も軒並インフレ圧力の高まりを受けています。
そんな中にあって、中国だけデフレが猛烈に進行しているというのは、なんとも不思議な状況です。
結局のところ、新型コロナを克服して経済回復に向かっているように見えたこの国ですが、実は人類がかつて経験したことのないような大デフレ国家へと転落しつつあるという問題が明確に浮かび上がりはじめているのです。
時を同じくするように17日、経営再建中の中国不動産大手・恒大集団がニューヨークの裁判所に外国企業の破産手続きを調整する連邦破産法15条の適用を申請。その負債総額は2兆4,374億元(約48兆円)となっています。
さらには不動産バブル崩壊で中国版のリーマン・ショックが起きたと囃し立てる市場参加者も現れていることから、中国を取り巻く経済状況は急激に悪化していることが鮮明になっています。
不動産バブル崩壊は中国国内で片付く問題だが…
中国恒大集団の経営破たん問題はすでに何年も前から顕在化していたものであって、いきなり足元で起きているわけではありません。なにより中国は資本主義風味の社会主義国ですから、国営企業に近い民間不動産企業の負債や不動産投資に失敗した国民への対応は、むしろ他の先進国よりも粛々と処理が進むことが考えられます。
そのため、巷で言われているほど大きな問題にはならずに終息する可能性があります。
しかし、この一方で鮮明化しつつあるデフレ大国化の問題は、不動産バブル崩壊よりもはるかに深刻な状況を世界経済にもたらす可能性がでてきているのです。
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