8月18日、ビットコインは11%も急落した。また、これとともに主要な暗号通貨全体が下落した。今回は暴落した理由と、その背景となった動きについて詳しく紹介する。(『 ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン 』高島康司)
※本記事は『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2023年3月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
急落したビットコイン
8月18日、ビットコインは11%も急落した。また、これとともに主要な暗号通貨全体が下落した。ビットコインは値を戻さず、現在は382万円前後で取引されている。これは、サム・バンクマン・フリードの「FTX」の失敗によって引き起こされた11月の1万5,000ドルへの暴落以来、最悪の暴落になる勢いだ。
また、イーサリアム、リップル、ポリゴン、ドッジの価格も下落した。イーサリアムは、「米国証券取引委員会(SEC)」のイーサリアム先物を保有する「上場投資信託(ETF)」を承認する意向であるというニュースにより、ビットコインよりもわずかに持ちこたえたものの、週中に約10%下落した。
中国発の急落
今回の下落の背景となったのは中国である。
まず、かねてより経営的に悪化していた中国の大手不動産会社「恒大集団」がニューヨーク連邦破産裁判所に連邦倒産法第15条の適用を申請したことである。恒大集団の負債総額は48兆円に上るため、恒大集団の破綻は中国の不動産バブルを弾けさせ、中国経済全体の足を引っ張ると見られたのだ。
中国本土では、ビットコインの投資は実質的に禁止はされているものの、第三国を経由した中国の資金のビットコインへの投資はいまだに多い。恒大集団の破綻による中国経済の先行き不安から、中国の投資家が利益確定を急ぎ、ビットコインの売りに出るとの観測から、ビットコインの相場が下落したようだ。
しかし、「連邦倒産法第15条」の適用申請は、恒大集団のアメリカにおける資産を保全する目的の規定であり、アメリカの債権者による資産の差し押さえを回避するための申請であった。基本的に、恒大集団の破綻とはなんの関係もない。しかし、こうした事実が明らかになったときはすでに遅く、ビットコインの売りが始まっていた。
中国のデフレ懸念
また、中国のデフレ懸念もこれを後押しした。公式の消費者物価指数によると、7月の中国の消費者物価は前年比で0.3%下落した。変動の激しい食品価格とエネルギー価格を除いたコアインフレ率は、6月の0.4%から1月以来の高水準となる0.8%に上昇した。
輸出の減少、若者の失業率の記録的な高さ、住宅市場の停滞など、さまざまな問題によって景気回復が勢いを失っている。中国はまた、鉄鋼や石炭のような商品、野菜や電化製品のような必需消費財など、さまざまな分野で価格下落に直面している。
これは世界的な傾向とは対照的で、多くの国はコロナの規制緩和後と、インフレ率の上昇の抑止に取り組んでいる。
懸念されるのは、物価下落期待が定着し、需要を減退し、債務負担を悪化させ、中国の政策立案者が採用している伝統的な景気刺激策では脱出困難なサイクルに経済を陥れる可能性があることだ。デフレは、中国のような債務残高の多い企業が中心の国にとって、債務返済コストを増加させ、借入、支出、投資を抑制する可能性があるため、特にリスクが高い。
こうした中国の状況は、世界経済全体に波及し、景気が減速する懸念が大きくなる。このため、多くの投資家が利益確定を急ぎ、ビットコインを売ったことが相場の急落を引きおこした。
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