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物価政策で見えた岸田政権の本性。国民の犠牲のもとに企業の利益を拡大させている=斎藤満

物価高政策に岸田政権の本質が集約されています。政権を支える米国や日本の産業界にとって利益となることを優先し、国民の利益は後回しに。それどころか、国民の犠牲のもとに企業の利益を拡大させる方策がとられています。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年8月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

バイデン政権と対照的な物価高対応

物価高政策に岸田政権の本質が集約されています。

米国ではバイデン政権が「物価高こそ政権の最大の関心事」と言い、FRBにインフレ抑制を強く求め、自らも昨年9月に総額4,300億ドル規模の「インフレ抑制法」を成立させました。国民の関心事は経済にあり、国民の支持を得るうえでは物価高抑制が最優先課題と述べています。

米国では大統領も国民の選挙で選ばれるため、票田となる国民の支持が不可欠です。従って、国内企業や周辺国から批判が出ても、票につながる国民の利益を最優先する姿勢が貫かれています。企業よりも国民重視の姿勢です。

これに対して、岸田政権の基盤は産業界と米国にあると理解し、政府は国民の利益よりも、米国政府や国内の産業界の利益を優先してきました。

「5年で43兆円の防衛費」でバイデン政権の支持を獲得。国民からの内閣支持率が低下しても、米国の支持、自民党への支持があれば、党内で調整して首相が選出できます。有力企業とつながっていれば、資金面でも困りません。

物価高は個人には悪でも企業の利益

物価高は国民生活を圧迫する要因になります。日銀の「生活意識に関するアンケート」調査でも。物価高をよしとする人は2.8%にとどまり、86%の人が「困ったことだ」と答えています。そしてこれが生活を圧迫し、「暮らし向き」に余裕がなくなる要素と答えています。

政府もまったくこれを無視できず、ガソリン高に対しては石油元売りに補助金を出して価格抑制を依頼しました。また電気代・ガス料金の高騰を緩和するために、今年の春からは消費者物価を約1%押し下げる「激変緩和措置」により、秋までの半年間、業界に価格抑制を求めました。

しかし、物価高の原因には手を付けず、いずれも「弥縫策」の域を出ません。

そもそも、今回の輸入資源コスト高を起因とするインフレは、日本全体のコスト高となり、輸入インフレとなるのですが、そのコスト高を抑制しない限り、誰かがそのコストを負担することになります。

そこに米国と異なる岸田政権の姿勢がうかがえます。

まず、海外からのコスト高を水際で抑制したり、省エネの促進などにより、輸入資源の需要減少努力は見せませんでした。円高にすれば輸入コストは抑制されますが、日銀に緩和を続けさせ、むしろ円安が加速して輸入コストがそれだけ大きくなる始末でした。

そしてそのコストを、企業ではなく、個人に負担させるべく、政府日銀は企業が価格転嫁しやすい環境を作るよう、日銀の金融緩和で支援しました。従って、企業が価格転嫁して、その分物価が上がることは「望ましい」ことになり、政府日銀はこの動きを抑制する気はまったくありません。企業にとって、資源高コストを価格に転嫁すれば、少なくとも企業の収益は悪化を免れます。

日銀は実際、企業が価格転嫁しやすい環境を作るために、大規模緩和で支援すると、明確に述べました(黒田前日銀総裁)。米国では個人を守るためにFRBが引き締めで需要を抑制し、賃上げを抑えるとともに企業が安易に価格転嫁できないようにしているのとは対照的です。

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