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物価政策で見えた岸田政権の本性。国民の犠牲のもとに企業の利益を拡大させている=斎藤満

円安も企業の利益

為替に対する姿勢も日本は明らかに企業寄りです。

例えば政府日銀は円安誘導してきましたが、円安は輸出の手取りを増やし、海外の外貨資産を円表示では大きくします。ドル資産をもつ企業や富裕層には円安が利益になります。また日本がドルベースでは安価になるので、インバウンド消費が増え、観光・小売業が潤います。

日本のGDPは民主党政権最後の2012年には円高もあって6兆ドルとなり、米国に次いで世界第2位の地位にありました。ところが、その後アベノミクスで円安が進み、その後もこれを続けたために、今日の為替水準では日本のGDPは4兆ドルを割り込み、ドイツにも抜かれて世界4位に転落、日本の地位が低下しています。海外投資家から見ると日本の不動産や企業は安く買え、買収が進みます。

反面、日本人がハワイやニューヨークに旅行すると、ハンバーガーセットに2,000円、ラーメンを食べると3,000円も払う羽目になります。円安で日本の企業と外国人が恩恵を受け、日本人の生活は苦しくなりますが、政府日銀はこれをよしとしています。

実際、日銀の黒田前総裁は、円安は個人の負担になるとしても、企業には利益となり「全体として日本にはプラス」と評価しました。

1997年のアジア通貨危機やアルゼンチンの通貨危機では、自国通貨安が国民経済や金融に大きな負担となり、「経済危機」と世界から認識されましたが、日本はなぜか、自ら進んで自国通貨安を進め、「日本経済全体としてみればプラス」と言い張ります。

通貨安が経済にプラスならアジア通貨危機もアルゼンチン危機もありえず、彼らの経済は通貨安で救われたはずです。

日銀の論理にはかなり無理があります。

国民の犠牲のもとに企業の利益を拡大させている

このように、岸田政権の物価高に対する対応がまさに岸田政権の本質を象徴しています。

つまり、政権を支える米国や日本の産業界にとって利益となることを優先し、国民の利益は後回しになります。

それどころか、国民の犠牲のもとに企業の利益を拡大させる方策がとられています。安倍政権では企業を儲けさせれば国民にも利益が還元されるという「トリクル・ダウン」の考え方を示しましたが、これは10年たっても実現しませんでした。

そもそも、「トリクル・ダウン」はあり得ないというのが世界の常識になっています。それを無視してあえてトリクル・ダウンを提示するのは、いかにも国民を馬鹿にした発想です。

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