国民皆保険制度の功罪
Araki:世界から取り残されている日本の現状をご理解いただくため、最初に医療の話からさせてください。
俣野:最近、Arakiさんが進出した分野ですね。
Araki:はい。これからの日本にとって、医療と農業(食糧)は2大テーマになると思い、参入しました。
実際に手がけてみて感じたのは、「金融以外の分野でも、金融業界と全く同じジレンマを抱えている」ということでした。
つまり、行政が規制を設けてがんじがらめに縛っているために、競争原理が働かず、世界から大きく遅れを取っているという事実です。
昨今の医学の進歩は目覚ましく、まさに日進月歩です。けれど、最先端の医療を受けるには、時に数千万円、数億円単位の費用がかかります。
その点、欧米社会では、民間の保険会社のサービスが充実していますので、賭け金に見合った医療を受けることが可能です。
一方、日本には国民皆保険制度があります。確かに国民健康保険でも、先進医療を受けられます。しかし特定の病気に限られていたり、罹患部位によって扱いが違ったりと、細かい規定があります。
たとえ世界で画期的な薬が発明されても、日本では保険適用になるまでに時間がかかり、国も医療費抑制のために価格を抑えようとします。
こうした状況を煩わしく感じて、日本での申請を後回しにする海外製薬メーカーが多いのが実情です。
俣野:国の保険制度であるがゆえに、変化のスピードに追いついていないわけですね。
Araki:確かに、国民皆保険のおかげで、日本人は誰でも平等な医療サービスを受けることができます。しかしその反面、受けたい高度治療を思ったように受けられない現実があるのです。
※参考文献:サイカルjournal by NHK:2023年6月16日ほか
日本政府は、国民が行動するのを恐れている
俣野:では、Arakiさんのメインビジネスである金融についてはいかがでしょうか。
Araki:現在、日本の金融庁が多大なる情熱を傾けて、日本の投資環境が良くなることを阻止している、という事実をご存じでしょうか。
俣野:それは、海外送金が難しくなってきていることと関係があるのでしょうか。
Araki:おっしゃる通り。現在、日本の金融商品の利回りは非常に低く抑えられていますから、高金利を求めて、日本の資金が海外に流出しないよう、国家が血道を上げているということです。
資本が自国を嫌って海外に逃避する現象を、キャピタルフライトと言います。日本政府が恐れているのは、まさにこれです。
日本が現在、行っている対策は、「海外の情報を遮断して、海外の金融商品を日本に持ち込ませないこと」「海外送金を非常に難しくしていること」の2点です。
たとえば、私たちのクライアントが「海外で不動産物件を買いたい」と希望したとしても、日本の銀行から海外送金を行おうとすると、全力で止められます。「何に使うのか」といったことをしつこく聞かれたり、大量の証明書類を提出したりするよう要請されます。
海外送金は、依然不可能ではないにせよ、格段にハードルが上がっているのは事実です。