<4. 成長戦略は明確か?>
次に、成長戦略が明確かどうかを考えましょう。
成長戦略を確認するための手がかりとして、有価証券報告書の「対処すべき課題」セクションを見ることをおすすめします。
このセクションには通常、中期経営計画の内容が含まれており、三菱UFJの成長戦略が示唆されています。
具体的に三菱UFJの成長戦略を見ると、収益力を強化し、経営課題解決型アプローチを採用し、アジアビジネス、GCIB(グローバルコーポレート&インベストメントバンキング)、グローバルマーケット、グローバルアセットマネジメント、インベスターサービスを推進するという内容が記載されています。
しかし、これは部署名を挙げるだけで、詳細な戦略が不透明であると感じられます。
成長戦略があまり具体的でなく、実現性にも疑念が残ります。
構造改革については、事業ポートフォリオの見直しが必要であるという点は理解できますが、具体的な実施戦略が不足しており、強力な戦略とは言い難いです。
したがって、三菱UFJの成長戦略については期待を持ちづらく、むしろ業績の安定性に焦点を当てるべきということになります。
<5.財務や事業のリスクは?>
財務の面でのリスクについては、格付情報が参考になります。
三菱UFJはムーディーズでは「A1」、S&Pフィッチから「A-」と評価されています。
R&IやJCRといった日系の格付け会社は甘い傾向があり、「A+」、「AA-」となっています。
実際は「A-」くらいが妥当だと思われます。
絶対安心というわけではないということになりますが、一方で危険でもないという水準です。
リスクを考えるとキリが無いですが、まずは影響の大きそうな部分を仮説を持って検証することが重要です。
短期的には景気の影響を大きく受けやすいところです。
長期的な観点から見ると、ネット銀行との競争やデジタル化の進展が、銀行業務に影響を与える可能性があります。
しかし、現時点では深く考える必要はないかと思われます。
成長は期待できず、景気の影響を受けるため三菱UFJは循環的な側面があるということになります。
ここで株価が割安かどうかを考えます。
PBR(株価純資産倍率)は0.7倍で1倍を下回っていますが、過去5年間のPBRの水準と比べるとかなり高くなっています。
配当利回りも低下しており、相対的には割安感は無くなってきているということになります。
成長は期待できず、割安感も薄れている現状では、買うメリットは無いというのが私の評価になります。
分類としては三菱UFJは割安株と循環株の中間に位置することになりますが、割安株として見るなら今はそこまで割安ではない、循環株として見るなら今はむしろ良い特と言えます。
割安株、循環株どちらの面から見ても今は「売り」というのが私の判断です。
もちろん私の考えが絶対正しいというわけではなく、情報を整理し、自分自身の投資戦略に合致するかどうかを検討することが大切であるということです。
自分で理解して投資をすることができれば、投資の世界が広がるのではないかと思います。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年5月18日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。