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孫正義氏の“AI革命”で日本飛躍へ。ソフトバンクGが25年秋に量産する「AI半導体」が世界を席巻する=勝又壽良

英アーム買収が競争力原点

孫氏が、AIにかける構想は14年前から持っていた。これを知ることで、孫氏の打ってきた「布石」の意味が理解できるであろう。それは碁と同じで、最終局面で実を結ぶのだ。

孫氏は2010年、ソフトバンクの30年計画を宣言した際に、「人工知能を持った『脳型コンピューター』を搭載したロボット」の登場を予測していた。世界が、ホワイトカラーからメタルカラー(ロボット)の時代に移行する」としていたのだ。

孫氏のロボット熱は現在、全自動運転自動車への夢へと繋がっている。この夢を実現する手立てが、英国の半導体設計企業アームの買収(2016年)となって結実した。当時、総額3兆3,000億円という大型買収である。

孫氏は、なぜアームに注目したのか。それは、アームが得意とする省エネ技術の半導体設計能力にある。また、スマホを中心に生まれる巨大なアプリの生態系(エコシステム)である。アームは、スマホ時代に低消費電力半導体で能力を磨き続け、膨大な数のソフトウエア会社との深いつながりを持っていた。これを生かせる強みを評価したのだ。要約すれば、買収当時のアームがスマホ半導体設計会社であるものの、その潜在的発展力に大きく注目したのである。

アームは事実、SBG買収後に大きく変質した。買収翌年の17年に、アームは会社を実質的に4分割した。圧倒的な強さを誇るスマホから切り離したのがIoT、自動車、そしてデータセンターである。孫氏は、アームの技術者を大幅に増員して新たな3部門へ経営資源を投入した。着々と孫氏の構想に向けて布陣を固めていたのである。

アームはその後、AI半導体で強みを持つエヌビディアとの合併を画策した。各国当局の反対で頓挫したが、アームCEOのレネ・ハース氏は、「エヌビディアとやろうとしていたことは我々だけでもできる」発言している。エヌビディアは、上記の通りSBGが株主であった時期もある。アームは、すでにエヌビディアの内情を掴んでいる。エヌビディアを超えられるAI半導体を設計できる自信があるのだろう。

前記のハース氏は、米オープンAIのチャットボット(自動会話プログラム)「チャットGPT」などのAIモデルについて、電力への「飽くなき需要がある」とし、「情報を収集すればするほど賢くなるが、賢くなるために情報を収集するほど、より多くの電力が必要になる」と語っている。また、エネルギー効率が改善しなければ、「2029年末までにAIデータセンターは全米の電力需要の20~25%を占める可能性がある。現在はおそらく4%かそれ以下だ」とし、「とても持続可能とは言えない」と指摘する。

こうしたAI時代のアキレス腱である電力多消費は、どのようにして解決されるのか。NTTが開発した「光半導体」であれば、電力消費量は100分の1、つまり1%へと劇的に切下げられる。こうした局面で、NTTがアームと協業するという時代が近いであろう。

一方、NTTは独自で半導体製造への動きをみせている。NTTは23年6月、子会社だったNTTエレクトロニクスを吸収合併し、新たに半導体メーカーとしてNTTイノベーティブデバイスを設立した。NTTイノベーティブの設立は、自らも半導体企業を持とうという意思の表れである。光半導体やフォトニクスを、前工程から後工程まで一貫製造する計画だ。

Next: 日本起点のAI革命はすぐそこ?SBGは来年に半導体試作へ

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