政府債務はハイパーインフレと我々の預貯金で返済?
さらにターナー氏は下記のような指摘もしている。
「日本の公的債務残高から政府資産および準政府機関が保有する国債を差し引いた純債務は、国際通貨基金(IMF)の標準的な定義に従うとGDP比128%になる。このうち約半分(GDP比66%)は現在日銀が保有しており、日銀は政府の影響下にある。よって日銀を含む統合政府ベースではこの債務は存在しないので、本当の意味での純債務はGDP比62%となる」
政府資産に関してはすべて売却が可能となるのかといった問題もあるが、そこの部分はさておき、準政府機関が保有する国債や政府の影響下にあるとする日銀が保有する政府債務は存在しないような見方となっている。
しかし、日銀のバランスシートなどを考えるとこれもおかしいであろう。
日本では戦後に預金封鎖ということが起きた。新円切り替えと同時に国民の預金を封鎖しそれにより政府債務の削減を図った。ハイパーインフレも手伝ってあっさりと政府の巨額債務をなくしてしまった荒技である。
ターナー氏も指摘しているように巨額の財政赤字を無制限に引き受けたら、大幅インフレは避けられない。だからインフレ率に応じて引き締めることをルール化する必要があるとしているが、そんなルールは通用しなくなる。だから財政法で日銀の国債引き受けが禁じられているのである。
ターナー氏は金融政策の手段としてヘリコプターマネーを持ってきたように思われる。つまり日本の巨額の政府債務は、ヘリコプターマネーによるハイパーインフレとともに、国民の借金である以上、国民の預金を使って債務を返済すべしと暗に提示しているのではなかろうか。
『牛さん熊さんの本日の債券』2016年6月7日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による
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