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安倍総理の誤算。トランプ大統領はなぜ「日本の消費税」に怒るのか?=近藤駿介

消費税への「外圧」で、本邦輸出企業は4.5兆円減益も

4月の通商交渉月間を前に、トランプ大統領が署名した大統領令の内容は、商務省と米通商代表部(USTR)に対し、貿易相手国ごとに輸入を事実上制限している非関税障壁や、輸出を促すための不当な輸出補助金などの実態について整理し、90日以内に報告するよう求めるというものだ。

日米の貿易問題の主役は自動車農産物であり、この分野での交渉はTPP交渉を上回る厳しいものになることが想像される。

しかし、それ以上に安倍政権にとって懸念されるのは「輸出を促すための不当な輸出補助金」の部分かもしれない。それを追求されることで、日本における消費税の構造的な問題が浮き彫りになる可能性があるからだ。

日本の消費税は国内取引に対して課税されている。企業は国内販売時に受け取った(預かった)消費税から、仕入れ等で支払った消費税の差額を国に納める形になっている。しかし、輸出においては販売先が日本の消費税課税対象外である海外であるため、販売先から消費税を受け取ることはない。その一方国内での仕入れに対しては必要な消費税を支払っている。それゆえ、輸出企業は消費税の払い損になってしまう。

そこで「輸出企業が消費税の払い損になる事態を防ぐ」という名目で設けられているのが、輸出企業に対する「消費税還付制度」である。これは、輸出企業が国内仕入れの際に支払った消費税を全額還付するもので、結果的に企業は消費税を全く負担しないで輸出できる構図になっている。

2016年の日本の輸出額は約70兆円である。仮に輸出品の粗利益率を20%だとすると、約4.5兆円の消費税が輸出企業に払い戻される計算になる(実際には6兆円以上という指摘もある)。2016年度予算での消費税徴収額は17兆円強であるから、消費税2%に相当する税収が輸出企業に払い戻しされていることになる。

これまでも一部から、「消費税還付制度」は輸出企業に対する補助金であるとの批判がされてきたが、大企業からの支持で成り立っている安倍政権がそこに手をつけることはなかった。

しかし、日本の輸出企業と対立関係にあるトランプ政権がこうした制度を「輸出を促すための不当な輸出補助金」だと批判を加えてくることは十分考えられることだ。国内からの批判を無視し続けてきた政府も、トランプ政権からの圧力を無視するのは難しい。

貿易不均衡の是正するための政策としては、

  • 関税障壁を設ける(いわゆる保護主義)
  • 為替市場に貿易不均衡の調整機能を持たせる(黒字国の通貨安政策の禁止)
  • 輸出補助金の禁止

などが考えられる。

日本は自由貿易を標榜しているが、通貨安政策や輸出補助金の部分に関しては突っ込まれどころ満載の状況にある。仮に輸出企業に対する「消費税還付制度」が外圧によって廃止されるとなると、輸出企業の利益は4.5兆円以上減ることになる。

法人企業統計調査における金融業、保険業を除く全産業の2016年の経常利益総額は72兆円弱であるから、単純計算上では、それだけで6%以上の利益が吹っ飛ぶことになるのだ。

Next: トランプ大統領が放つ「2の矢、3の矢」は日本に向けられている

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