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「金利の正常化」に向かうFRBと「異常な金融政策」に向かう日銀=近藤駿介

黒田日銀にとっての「逆風」

イエレンFRB議長が「タカ派」発言をしたのは、市場に利上げが射程圏内に入っていることを伝えるためである。

それは、米国の2年債を中心に短い金利の上昇を促し、イールドカーブをベア・フラットニング化することで利上げの衝撃を抑えることと、法定準備預金の16倍にも達している超過準備預金の市場流出を食い止める必要があるからだ。

現在FRBに積まれている超過準備預金は、好調な米国経済に使われていない「不要な資金」である。こうした経済活動に必要のない資金が流出するということは、バブルを生むということだ。

大量の資金が一斉に流出するとしたら、その対象は株か不動産である。

利上げモードに入ったFRBは、これまで以上に株価や不動産価格の上昇に神経を尖らすはずである。もしFRBが利上げモードに入る中で株価や不動産価格が上昇するとしたら、より「タカ派的発言」でブレーキを掛けに行く可能性が高い。「根拠なき熱狂」という表現は使わないだろうが。

米国市場は世界の金融市場のベンチマークになっている。FRBが短期ゾーンを中心に市場金利の上昇を促すとしたら、世界の市場金利にも上昇圧力が掛かることになる。これは、マイナス金利を深掘りできると「根拠なき豪語」を続けている黒田日銀にとっては逆風である。マイナス金利政策の限界が露呈する可能性があるからだ。

さらに、海外投資家と日銀頼りになっている日本の株式市場は日本独自の要因で上昇に転じるエネルギーを持ち合わせていない。日銀によるETF購入によって一時的な株価上昇を演出できる程度だと考えておいた方が賢明だ。

その一方で、裁定買い残高が枯渇してきていることで、株式市場が軟調な展開になっても、投資家が恐れる鋭角的な下落が起きる可能性は低くなっている。バブル崩壊以降、多くの投資家は鋭角的な株価下落をイメージしがちだが、市場環境は大きく変化してきており、足下でそれは「幻想」と化しているといっても過言ではない状況にある。

日本株を下支えする原動力は、国内投資家が抱く鋭角的な株価下落という「幻想」になる可能性は高い。日本株市場は、期待するほどの上昇も下落も起こり難い状況に陥っている。

投資家にとって最も辛い状況は、「株価の低迷とボラティリティの低下が共存する」局面である。

ボラティリティの上昇を伴う株価下落は「逆張り」が効く可能性を秘めているが、ボラティリティの低下を伴う株価下落局面では「逆張り」は命取りになりかねないからだ。これを避けるために必要なことは、「株価水準」で投資判断をしないことだ。しかし、これは言うほど簡単なことではない。

FRBによる追加利上げが射程圏に入ったことで、日本株の運用は一層難しくなることは覚悟しておいた方がよさそうだ。

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年8月29日号)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。

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