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「金利の正常化」に向かうFRBと「異常な金融政策」に向かう日銀=近藤駿介

市場の注目を集めてきたジャクソンホールでのイエレン議長の講演。その内容は指摘して来た通り市場想定以上に「タカ派」であった。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。

投資家にとって最も辛い状況、これからの日本株運用は一層困難に

射程圏に入った米国利上げ

「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」

イエレン議長のこの発言は、追加利上げが射程圏に入ったことを示唆するもの。

イエレン議長は利上げ時期については明言をしなかったが、これは中央銀行のトップとして当然のこと。「フォワードガイダンス」などという尤もらしい言葉が幅を利かせるようになった今では死語と化しているが、以前日本で「衆議院解散と公定歩合の変更に関しては嘘を付いていい」と言われて来た通り、本来金融政策の変更は事前に告知するものではない。

【関連】危険なドル高、上値追い。イエレン議長ジャクソンホール講演結果分析=E氏

イエレンFRB議長の講演直後にすぐさまフィッシャーFRB副議長も「タカ派」の発言をしたが、これは追加利上げが射程圏に入ったことを強調するためのもの。

「タカ派」発言が続いたことで利上げ観測が広まり、市場が見込む9月のFOMCでの利上げ可能性は33%まで上昇して来た。

しかし、個人的にはこの利上げ確率はまだ低過ぎるように感じている(その理由については「東洋経済オンライン」で29日に公開される拙コラムを参照)。

中国経済が鈍化するなかで個人消費が景気の牽引役となり、英国のEU離脱ショックがあっても金融市場は安定的に推移してきており、利上げ先送りの大きな要因であった「海外リスク」はもはや利上げの大きな障害にはならなくなっている。

今週末9月2日に発表される8月の雇用統計が強い内容であったら、FRBが利上げを先送りする理由がなくなってしまう。市場を納得させられる理由を示さずに利上げを先送りすることは、「利上げは経済指標次第」と明言したFRBに対する信頼を失墜させかねないもの。信頼を失墜してしまうと、市場をコントロールすることが難しくなることは日銀が証明済みであり、FRBは同じ轍を踏むことはしないはずである。

今回イエレンFRB議長が市場に利上げを意識させることに成功したことによって、金融市場は「9月のFOMCで追加利上げあり」という前提で動き出す可能性が高い。

これは年内利上げの可能性は50%以下だとしていたこれまでの前提が大きく変化することを意味するもの。ニューヨーク株式市場のボラティリティは足下5%台まで低下してきているが、こうした投資前提の変化を反映する形で上昇に転じる可能性は高い。

しかし、FRBが目指しているのが「金利の正常化」であり金融引き締めではないことや、FRBが史上最高値圏にある株価を下落させることを目的にしているわけではないことから、ボラティリティは急上昇するというよりも、過去の平均値である13%前後への「ボラティリティの正常化」が進む過程で「高値波乱」の展開になるのがメインシナリオ。

FRBの利上げが射程圏に入ったことで、為替市場におけるドル高圧力は高まることが想像される。これは日本株にとっては追い風となるだろう。

イエレンFRB議長の講演を受けて為替市場で101円台後半まで円安ドル高が進んだことで、巷では日本の株式市場が活況を取り戻すことに期待するコメントも散見される。

確かに為替市場で101台後半まで円安に振れたことで、週明けの日経平均株価は反発して始まる可能性が高い。しかし、日本株が活況を取り戻すことに過度な期待をかけるのは禁物だろう。

Next: FRBの追加利上げが射程圏に入り、日本株の運用は一層難しくなる

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