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じゃがいも不足で販売休止、ポテトチップス大手「次の一手」は?=佐藤昌司

過去の価格推移と、今後ポテチ好きを襲う最悪のシナリオとは?

今回のカルビーのポテトチップスの一時休売で懸念されることがあります。それは「便乗値上げ」です。販売の再開時に値上げ、または値段据え置きで容量を減らす実質的な値上げが行われることが懸念されます。カルビーは過去にポテトチップスの実質的な値上げを行なったことがあるからです。

カルビーのポテトチップスは1975年に誕生しました。「100円でカルビーポテトチップスは買えますが、カルビーポテトチップスで100円は買えません。悪しからず」のCMが大ブレイクしたことで認知され、多くの消費者に支持されるようになりました。ちなみに、発売当初の価格は100円で容量は90gなので、1gあたり約1.1円です。

発売から現在まで、カルビーのポテトチップスの価格と容量は何度か変更が加えられています。例えば、2007年にポテトチップスの一部商品の規格改定を行なっています。「ポテトチップス うすしお味」の90gのものは85gに減量しました。参考価格は税込み145円で据え置いたままなので実質的な値上げです。この場合の税抜き価格は138円で、90gでは1gあたり約1.5円85gでは約1.6円です。

2007年の規格改定はジャガイモの不足を理由としています。ジャガイモ栽培農家と栽培面積の急激な減少と、主産地である北海道で前年に天候不良に見舞われたため、収穫量が計画を大幅に下回ったことを同社は理由として挙げています。

1975年発売のポテトチップスは1gあたり約1.1円で2007年の規格改定直前のものは約1.5円なので、32年間でおよそ1.4倍になりました。1.4倍のため割高になったようにも思えますが、物価上昇を考慮すると実は割安になっていることがわかります。

総務省統計局「消費者物価指数」を出所とした日本銀行公表の文書によると、2007年の消費者物価指数は1975年と比べて約1.8倍になっています。1gあたりの価格は約1.4倍になりましたが、物価の上昇はそれを上回る約1.8倍のため、ポテトチップスは割安になっていることがわかります。カルビーの企業努力により割安で消費者に親しまれる製品になっていったと言えるでしょう。

一方、物価は1993年頃から現在までは同程度の水準で推移しています。物価が上昇しているのであれば値上げをしても割高感は出ません。しかし物価の上昇が見られない2007年に実質的な値上げを行なったため割高感が出ました。原料のジャガイモが不足していましたが、それは消費者にとっては関係のない話です。そのため、消費者の理解が得られにくい値上げだったと言えるでしょう。

現在、2007年から10年経ちました。カルビーの「ポテトチップス うすしお味」はコンビニであれば85g(コンビニ限定サイズ)で税抜き141円で販売されています。1gあたり約1.7円なので、2007年の規格改定後と同水準で維持されているとみていいでしょう。節約志向を強める消費者が気軽に買い求めることができる水準といえます。

Next: 消費者はポテチメーカーの「値上げ」を受け入れるか?

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