「兄弟で共有すれば良いのでは?」に潜む大きな落とし穴
なお、「では、自宅を共有にすれば良いのでは」と考える方もいるでしょうが、兄弟同士での不動産の共有はおすすめできません。なぜなら、不動産は「人間よりも長生き」だからです。共有にした兄弟にもいずれ相続が発生し、権利は次世代へ移ります。
そうなると、兄弟同士で共有していたはずの不動産は、長男の子と二男の子、つまり、いとこ同士での共有になります。その後も時が経つごとに次世代への相続が起こり、最終的には売ることも貸すこともできない、非常に使い勝手の悪い不動産になってしまいます。
このような状態になってから名義の集約のご相談に来られる方もいらっしゃいますが、まずは共有者を探し、連絡を取ることから始めなければならず、時間も費用もかかり、非常に大変です。そのため、安易な不動産の共有はオススメできません。
相続対策は元気なうちに
とにかく、「うちの財産は自宅だけだから」という場合こそ、何ら対策をせずに相続が起きると、残された家族が困ってしまうのです。このような状況では、相続が起きてからの根本的な解決は困難です。どうしても当人同士での話し合いがまとまらなければ、弁護士を入れ、裁判所に舞台を移し、法的な妥協策を受け入れるしかありません。
しかし、お元気なうち、ご生前であれば、いくらでも対策が可能です。
具体的な対策は個別の状況によりますが、一例を挙げると、
- 長男あてに、自宅不動産を相続させる旨の遺言書を作成する
- 「長男」を受取人として生命保険をかけておく
などです。
遺言書を作成することで、まず自宅不動産を長男に渡す事ができます。そのうえで、二男から最低限の取り分のお金を主張された場合には、長男は保険金を受け取りますので、その保険金から、二男への支払いが可能です。
「財産は自宅だけ」という人ほど、もめてしまったとき解決策が少なく、大変な事態になります。一方で、生前の対策があれば、家族がもめずに済むのです。財産が少ないから関係ない、自宅のみだから大丈夫、といって相続から目を背けるのではなく、生前から、しっかりと対策を検討しておきましょう。
『こころをつなぐ、相続のハナシ』(2016年9月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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