なぜVisaはApple Payに消極的なのか?
国際ブランドのVisaにとって悩ましいのは、「このままApple Payが日本に定着すると、自分たちの計画が思うようにいかなくなる」ということでしょうか。
その計画とは、Visa、マスターカードが2020年東京オリンピックに向けて進める非接触ICを使った展開(こちらは世界標準のNFCタイプA、タイプB)で、デバイスは世界標準のPay-WAVEというクレジットカードをスマホに入れて使う予定です。
海外から来る人たちに一番使ってもらえる規格ということで、オリンピックを控えてこれから端末を全国に配置しようという矢先に、アップルの参入で出鼻をくじくかれたのです。
加盟店とすれば、フェリカの端末でフェリカ方式のスイカやクレジットカードで便利にやれるのなら、新たな投資もいらないので、それで十分だと考えるかもしれません。
そうなると、わざわざタイプA、Bの新しい端末を入れることには躊躇するかもしれません。
そうした事態になると大変です。Visa、マスターカードの考える新しい端末の普及は進まないことになります。計画が頓挫しかねないのでやきもきしているのです。
Visaがアップルとの付き合いに消極的なのは、こういう理由があるからだと思うのですが、いかがでしょうか。
2020年東京オリンピックを見据えた壮大な計画
非接触ICのNFCにはタイプA、タイプB、それにフェリカがあります。
このうちタイプA、タイプBは国際標準規格と呼ばれて、世界で認められ広く使われています。それに対してフェリカは、国際標準を取れなかったために今までは日本でしか使われませんでした。
しかし 、その性能が良かったためにJR東日本のスイカは人気となり、急速に普及しました。今回アップルはそのスイカの性能の高さを買ってApple Payに搭載したのですが、実はNFCのタイプA、タイプBも搭載しています。
さらに世界で出ているiPhone7のうちのグローバルタイプと呼ばれる機種には、すでにタイプA、タイプBのほかにフェリカも搭載されていると言われています。
つまり、海外でも一部の機種に日本限定といわれたフェリカがすでに搭載されて、いつでも使える状態にはなっているということです。
そして私は、このフェリカはおそらく、2020年のオリンピックを目指したものではないかとみています。
海外からの観光客が殺到するその時に、iPhoneにスイカをダウンロードして、日本に到着してからは成田空港ですぐにチャージして、電車に乗ったり、東京に着いたら買い物にも使ってもらおうとアップルは考えているのではないでしょうか。そしておそらく日本政府は、そういう目論見があったからアップルに懇願したのではないかと思われます。
そしていちど日本でスイカの便利さを味わった外国人たちは、母国に帰ってからも、また次の日本行きで、スイカを使うのを楽しみにすることでしょう。
その噂が広まって、その国でも日本政府が鉄道システムを入れるときにスイカも一緒に入れるということになるかもしれません。そこまでみると、スイカが厚遇されている意味がわかるような気がします。