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住商巨額損失事件のウラ~私が元上司の「簿外取引」を通して学んだこと=江守哲

損失処理と「楽しい」日々

元上司が残したポジションにより発生した損失の処理のため、来る日も来る日もゴールドマン・サックスのオフィスに通い、一日を過ごす日々が続きました。こうなると、自分はどの会社の人間なんだろうと勘違いするようになるほどでした。このように、毎日通っていると、他社の人間でも、いろんな人たちと深い話をしますので、だんだんと仲良くなってくるものです。

最初は言い合いをしていたミドルオフィスの人間たちとも仲良くなり、コミュニケーションも上手くとれるようになってきました。損失処理をしていることを忘れるほどの雰囲気でした。不謹慎かもしれませんが、楽しいと思ったこともありました。

そういえば、身重の家内が、朝からおにぎりを作ってくれ、それを持たせてくれたことはいまでも忘れられない思い出です。娘が生まれる直前で、さらに長男もまだ2歳と大変な時期でしたが、一番迷惑をかけている家内のやさしさが身に沁みました。朝からこのおにぎりを食べながら、何とか早く処理を終わらせたい、そして自分の次のステージをどうすべきなのか、そのように考えるようになりました。

勘弁してよ、浜中さん

さて、このような日々を過ごしていると、面白いことに気づきました。それは、大量にポジションを持つことで可能になる、収益の上げ方です。

今回の損失の発端は、簿外取引をしていたことでしたが、残されたポジションの大半がロングポジション、つまり買持ちでした。買い持ちということは、価格が上がれば利益になるわけです。つまり、元上司の浜中さんは価格上昇に賭けていたことになります。

浜中さんは見た感じは穏やかでしたので、とても強気でロングをガンガンに張るようには見えないひとでした。しかし、マーケットではロングで収益を上げるトレーダーとして知られていました。残された簿外のポジションも、結果的にほとんどが買い持ちだったわけですが、この処理が大変だったことは言うまでもありません。

大量に残ったロングポジションをマーケットで売却するのは、簡単ではありません。売りを出せば、価格が下がってしまい、さらに評価損が膨らみます。最終的には売却価格も安い水準になり、損失が拡大することになります。

それは避ける必要がありました。しかし、本社からは「早く売り切れ!」との命令が飛んできます。

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