今、話題の「VALU売り逃げ騒動」は一旦の収束に向かいつつあるようですが、なぜ全VAを放出する必要があったのか?など6つの不可解な謎が残っています。私はVALUの仕組み自体を否定するものではありませんが、事件の全貌と合わせて考えてみたいと思います。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)
株なら確実にブタ箱送り?解決されずに終わりそうな6つの謎とは
人気YouTuberのVALU売り逃げ騒動
8月16日、個人が発行する仮想株式を売買する「VALU」というネット上のサービスで、人気YouTuberの価値が高騰後に暴落する騒動が起きました。
この騒動を知らない方のために、簡単に概略を説明します。今回、この騒ぎの中心になるのは、人気YouTuberのヒカル氏です。
ヒカル氏は14日にTwitter上で「今から本格的にVALUでの活動を始める」と表明しました。このツイートを見た人の間で、「ヒカル氏が近々、購入者に対して何らかの還元を行う優待を発表するのではないか」との憶測が飛び交いました。そして、ヒカル氏のVALUは高騰しすぎて買い手だけになり、誰も買えなくなってしまいました。
そしてその後、誰もが予想しなかったトンデモナイ事が起きます。VA購入希望者が増えて値段が上がったあと、優待発表をほのめかすコメントを消し、ヒカル氏本人をはじめ関係者らが所有していたすべてのヒカル氏のVAを売却。ヒカル氏はこの売買で4,000万円以上の利益を得たとされています。当然、この一連の流れでヒカル氏のVA価格は暴落し、購入者は損害を受けることになりました。
そもそもVALUとは?
VALUは、株式会社VALUが提供しているインターネットサービスです。SNSのフォロワー数や友達数をもとに時価総額を算出し、「VA」と呼ばれる投資の単位を発行します。VAはいわば「擬似株式」です。このVAは投資家の間で売買できます。また、取引はすべてビットコインで行われます。
VALU(バリュー)の名称の由来は、「VAL(VALUE=価値)+U(YOU=あなた)」です。個人が株式会社のように資金調達できるとして注目を集めています。
VAの購入者は、基本的にはVALU発行者のファンであることが多く、応援する目的で投資を行います。VALU発行者が有名になると、VAの価値が上がって、発行者・購入者ともに大きなキャピタルゲインを得られます。
また、VALU発行者は独自に「優待」を設定することもできます。このあたりも「株式」を真似ていると思われます。
なお、この「擬似株式」は法律上は金融商品ではありません。法律上の扱いは「商品」となっています。「株式」ではなく「商品」であるがゆえに、証券取引法の適用外となっており、金融庁の管轄からも外れています。ここが結構、ミソになっていますので、後述します。
今回のVALU売り逃げ騒動を時系列で確認する
まず、今回の「VALU売り逃げ騒動」の全体像を時系列でまとめると、以下のようになります。
<8月10日>
ヒカル氏が約5,829円(初値)でVAを発行。後にいっくん氏(禁断ボーイズ)、ラファエル氏もVAを発行しました。この3名は、同じNEXTSTAGEという事務所に所属しています。
そのNEXTSTAGEの顧問である井川氏は、この時点でヒカル氏が発行した75VAを所有していました。
<8月14日>
ヒカル氏らはTwitterでVALUを始めたことを告知します。「裏でちょっと面白いことを企画している(Twitterの原文)」と、ファンに向けて期待感を煽るような発言を行います。
発行当初からヒカル氏のVAは人気になっていて、連日、ストップ高が続いていました。この時点でヒカル氏のVAは2万9509円です。
また、VALU上のアクティビティの中でヒカル氏は、「待たせたな!明日一気にバリューで動く!」と発言しました。ファンの間では、明日、ヒカル氏が優待か何かを発表するのではないかと大きな期待が集まっていました。
また、ヒカル氏だけではなく、ラファエル氏、いっくん氏も期待感を煽るような投稿をほぼ同時に行っています。
<8月15日>
(早朝)
NEXTSTAGEの顧問・井川氏が、保有するヒカル氏の75VAをすべて売り抜けます。これで100万円前後のキャピタルゲインを得たものと思われます。
(11時頃)
井川氏が売り抜けた後、ヒカル氏といっくん氏も前日の終値(ストップ高)で、ラファエル氏はその日の終値(ストップ高)で全VAを売りに出しました。
ヒカル氏はこの売り出しで、4,000万円程の利益を得たと見られています。いっくん氏、ラファエル氏の利益も合計すると、NEXTSTEGE全体での利益額は1億円を超えると言われています。
その後、ヒカル氏はTwitterで「優待をつけるとは言っていない」と発言して、VALを購入していたファンの間で不安感が広がりました。
そして、運営側のVALU社はヒカル氏らのメインホーム画面にて「このアカウントは、規約違反に該当している恐れがあります」という警告文を表示しました。上記の一連のヒカル氏らの取引についてVALU社は問題があると判断したのです。
ヒカル氏らは買い煽りと疑われた一連のツイートをすべて削除しました。当然、ヒカル氏らのVAは買い手がつかない程、大暴落してしまいます。
<8月16日>
VALU社はヒカル氏らの一連の取引について以下の発表を行います。
- VALU社は一連の取引で得た手数料の全額を寄付する
- ヒカル氏らのVAへの売買注文をすべて一旦、キャンセルする
- 今後、利用者保護を最優先にしたルール作りに着手する
ヒカル氏は以下の発表を行います。
- 過去最高値ですべてのVAを買い戻す
- タイムラインに優待に関する履歴が残っていただけで、優待のページには何も記載していなかった
- インサイダー取引で井川氏を儲けせたのではなく、井川氏はファンのためにみんなにVAを売ってくれた
- 「自分たちの価値を比べて、誰が一番価値のある人間かを競う」という動画の企画だった
- 僕たちはVALUで一切、利益を得るつもりはなかった
- わざわざ数千万円のために自分の信用を落とすようなことはしない
<8月17日>
ヒカル氏ら、全VAを過去最高値で買い戻し(自社株買い)を開始する。