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ソロス氏も大損失!「トランプ相場の荒波」を個人投資家が乗り切る方法=江守哲

ドル円に立ちはだかる118円の壁

トランプ氏の大統領選後のドル高で、ドル円は118円台半ばまで上昇しました。昨年12月には118.67円、今年に入ってからは118.60円。いまはそこで上昇が止まっています。

チャート上はダブルトップとでもいうのでしょうか。いずれにしても、上値が重くなっています。

トランプ氏の大統領選後のドル高には驚きましたが、この動きを受けて、慌ててドル買いを進め、一定の利益を上げた向きも少なくないでしょう。

私は途中からこの上昇をやり過ごすことにしました。需給でしか動いていないと判断したからです。このような展開になると、再現性のあるトレードをするのが難しくなります。買いが買いを呼び、売り方の買い戻しが相場を押し上げる、いわゆる需給相場だからです。

背景があるようでない。あるのはトランプ政権への期待だけです。何の裏付けもありません。このような相場に乗るほど、怖いものはありません。

私のドル円に関する考え方は、前回の本欄で詳しく解説しましたので、それ以上の必要はないでしょう。前回示した内容を振り返った方は、驚かれているのではないでしょうか。

つまり、間接的にドル円は天井が118円になり、調整が必要になるとしていたからです。

これが勘や希望、期待ではないことは、解説の内容を読んでいただければ容易に理解できるでしょう。要は、手元にあるデータを利用して理論的に考えれば、現在のドル円が118円を大きく超えて円安になることはないとの結論になるわけです。

もちろん、今後118円を超えない保証はありません。しかし、現在のファンダメンタルズでは、118円を超えるのは難しいとの結論が出ているわけです。

投資判断にどのような材料を利用するかは、人それぞれでしょう。

ドル円で重要なのは日米実質金利差

私はドル円については、日米実質金利差をもっとも重視しています。これが一番あてになるからです。

市場では、いろんな材料を取り上げて、ドル高・円安を誘導しようとするでしょう。しかし、そのような見方をいろいろ見てみると、ほとんどのケースで定性的な希望的分析しかみられませんでした。

結局は業者の論理です。円安にならないと困る向きが、円安予測を出す傾向はいまも変わってないようです。ドル円は理論的に説明できる動きになれば、少なくとも105円前後にまでは調整するでしょう。

そのような動きになるのは、意外に近いかもしれませんし、先になるかもしれません。それは誰にもわかりませんし、予測することに意味はないように思います。

とにかく、根拠のある、再現性のある分析方法をもとにした判断を行うようにしたいところです。

実質金利差に見るユーロの異常事態

ちなみに、ユーロとドルの関係をユーロ圏と米国の実質金利差で見ると、ドル円以上に割高であることができます。

これには驚きました。つまり、ユーロドルは異常なまでに割安になっているということです。つまり、ユーロが安すぎるとも言えます。

ちなみに、ユーロドルの理論値は1.17ドルです。したがって、現在の水準に対して9.5%ドルが割高・ユーロが割安になっているといえます。

ただし、ユーロドルの場合にはドル円と違い、過去は理論値に収斂する動きにはなっていません。ですので、必ず1.17ドルになるというわけではありません。このあたりの判断が難しいところです。

ユーロは本当に難しい通貨だと思います。様々な背景の国同士の寄り合いでできた欧州各国がそれぞれの事情を無視して成立している通貨ですので、理論値は出しづらいといえるのかもしれません。

ユーロの割安感には、そのような目に見えないハンデが反映されているといえるのかもしれません。

また、今年は欧州での選挙がリスク要因として挙げられています。そのような事情もあり、買いづらい通貨との位置づけになっていることも、ユーロの割安感を強めているといえそうです。

トランプ政権のドル政策次第

このように考えると、根本的なドル高基調は続くかもしれません。しかし、あとは米国の出方次第です。つまり、トランプ政権のドル政策次第ということです。

いまのところ、この点について新政権側からは明確な発言はありません。また、推測でいろいろ考えても仕方がない面もあります。

根本的に米国はドル安にしないと厳しい状況にあることは明確ですので、最終的にはその方向に行くのでしょうが、いまはまだそれが見えていません。

いまは専門家や評論家がいろいろな角度から、新政権のドル政策について言及しています。しかし、それらはすべて推測でしかなく、実際の発言を聞くまではどうしようもありません。これらの発言を重視しすぎると、大変なことになる可能性もありますので、注意した方がよいと思います。

20日の大統領就任式後にトランプ氏のドルに関する発言が聞かれるのか、注目しておきたいと思います。

これらのほかにもいろいろ材料はありそうですが、すべてを網羅して正しい方向性を見極めるのはきわめて難しいでしょうし、実際にはほぼ不可能と思います。そうであれば、より実践に近い方法で分析した方がよいでしょう。それを私は実質金利差で行っているだけです。

前週からの繰り返しですが、今年は極端なバイアスを掛けず、冷静に市場動向を注視していきます。そうすれば、真の方向性が見えてくるのではないかと考えています。

Next: 菅官房長官「為替の危機管理をちゃんとやっている」発言をどう見るか

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