fbpx

「仮想通貨詐欺」にご用心!ビットコインの落とし穴はこう乗り越えろ=俣野成敏

2. 仮想通貨とハッカーの対決

話は変わりますが、2013年4月にスウェーデンで、ある珍事件が起こりました。首都・ストックホルムで起きた銀行強盗未遂事件です。強盗が押し入ったにもかかわらず、犯人は現金を強奪するのを断念したのですが、その理由はセキュリティが強固だったからでも、警察がすばやく駆けつけたからでもありませんでした。何と強盗が押し入った銀行の支店はキャッシュレス化によって、もとから現金を取り扱っていなかったからです。

2014年5月にマスターカードが行なった決済調査によると、スウェーデン人の現金決済率は41%、日本人は86%でした。いずれ日本の銀行強盗も、失業する日がやってくるのかもしれません。

【ハッカーがハッキングをする理由】

仮想通貨がお金である以上、現金と同じく必ず付きまとう問題が「強盗」です。デジタルの世界の強盗とは、いわゆる「ハッカー」と呼ばれている人たちがそれに相当するでしょう。

本来、ハッカーとはコンピューター技術に詳しい人のことを指すようですが、世間ではすっかり「システムの脆弱性を突いて不正アクセスを行う人のこと」というイメージが定着してしまいました。本当は、そういう人たちは「クラッカー」といって区別しているようですが、ここでは通例に従い「悪いことをする人」の意味で使うことにします。

デジタル通貨である仮想通貨にとって、ハッカーは宿敵ともいえる存在でしょう。ビットコインも誕生した翌年(2010年)には、すでにハッキング被害が報告されています。まだほとんど価値を見い出されていなかった頃にハッキングするとは、随分、先見の明のあるハッカーですが、そもそもこれが起こる原因とは、「価値あるものは常に狙われている」からです。つまり「狙わていること」自体が、仮想通貨の価値を証明しているともいえるのです。

以前、Windowsが圧倒的優位に立っていた時代は、Windowsがよくハッカーに狙われていました。当時、Windowsがひんぱんにアップデートしていた理由は、ハッカー攻撃にさらされていたからです。なぜハッカーたちは、OSソフトに過ぎないWindowsを一所懸命ハッキングしていたのでしょうか?

実は、彼らがWindowsを狙ったのは、「普及率が高かった」からです。それによって「自分の腕を試したい」「目立ちたい」という意図がありました。だからといって、必ずしも愉快犯ということではなく、その本当の目的とは「国などの公の機関にスカウトされるため」です。要は、就職活動のためです。目立つことによって、「超高額でスカウトされることを期待している」という側面があったのです。

【ハッカーがあなたの口座を狙ってる!?】

元来、ハッカーが狙うところがどこかというと、それは「もっとも効率のいいところ」です。ハッキングをするにもリスクがありますから、同じ労力をかけるのであれば、小さいところを狙わずに、当然ながら大きな見返りを得られる可能性があるところを狙います。

ですから「ウィルスソフトを感染させて、顧客情報を盗み取る」といったことをするのは、もっと小粒の窃盗犯がやることであって、腕に自信のあるハッカーが狙うのは、たいてい「大物」と相場が決まっています。

大物がどこかといえば、簡単にいってしまうと「たくさんお金がありそうなところ」――仮想通貨でいうなら「取引所」です。去年(2016年)もっとも大きな被害に遭ったのは香港のビットフィネックスですが、取引所だけではなく、仮想通貨を利用したファンドが攻撃の対象とされたイーサリアム流出事件もありました。まずは、香港取引所のハッキング事件から見てみましょう。

2016年8月、香港に本拠を置き、ドル建てビットコイン取引所で世界最大手だったビットフィネックスから、65億円相当といわれる資金が顧客の口座から盗まれたと発表されました。これは、かつて世界最大のビットコイン取引所だったマウントゴックスで起きた仮想通貨紛失事件(被害額は約500億円)に次ぐ被害で、これによってビットコインも影響を受け、一時相場が20%前後値下がりしました。

取引所ではなく、ファンドがハッキングされたのは、同年6月に起きたイーサリアム流出事件です。これは、5月にドイツのSlock.it社がThe DAOと呼ばれる分散型事業ファンドをイーサリアムのプラットフォーム上で組成し、それによって150億円相当の資金を調達して話題になった直後のできごとでした。

攻撃の対象とされたThe DAO自体は仮想通貨ではなく、仮想通貨の仕組みを利用したファンドでした。これも取引所と同じように、仮想通貨を売り物にした販売側のシステムの脆弱性を突かれた結果、50億円以上ともいわれる資金が不正移動されています。ハッカーは、The DAOのバグ部分からTheDAOを切断し、切断部分ごと仮想通貨を移動した模様です。

もともとThe DAOには27日間の預託期間(資金移動ができない期間)が設定されていたため、その間にイーサリアムのプロジェクトチームは盗難に遭ったアカウントや流出額を特定しており、「資金を凍結して取り戻せた」とも「いまだに攻防を繰り返している」ともいわれ、詳細は不明です。

Next: 仮想通貨元年は仮想通貨詐欺元年。考えられる悪の手口とは?

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー