もしもユーロがなかったら?ギリシャにとってEUが足枷になる理由
前ページのコメントは引用の引用だ。最初に引用したのは、金融市場関係者が日頃から情報ソースとして重視しているブルームバーグ紙だ。
ブルームバーグは上記の記事に触れながら、以下のようなコメントを載せた。要点を抄訳する。
もしも、1929年に国際連盟で通貨統合の提案がなかったらなら?
もしも、1995年12月にジャック・ドロールが、ECUに代えてユーロを本格導入する大きなステップを踏み出さなかったなら?
もしも、ギリシャが通貨統合に参加しなかったなら?ギリシャ・ドラクマの下落により、世界はギリシャの輸出競争力を高めていたことだろう。
現実を直視してみよう。ユーロの大まかな成立の1999年から、2013年までに、ギリシャの1人当たり実質GDPは1%以下の伸びだった。一方で、ドイツは19.4%増加した。
もちろん、2014年と2015年でその差は更に拡大している。1981年に、1人当たり実質国内生産の、ドイツとギリシャの差額は8102ドルだった。それが2013年には2万0976ドルへと拡大した。ギリシャの失業率は1999年から2015年までに、11.4%から25.6%へと倍増した。ドイツでは8.8%から驚くなかれ4.7%にまで低下した。
出典:What Things Might Be Like If Greece Had Never Joined the Euro
通貨安は国際競争力の上昇につながるので、しばしば自国通貨安政策を採る国が現れる。
一国の通貨安、競争力の上昇は、他国の通貨高、競争力の低下につながるので、しばしば通貨戦争と呼ばれる事態となる。そして、為替操作国と認定されれば、他国から経済制裁を受けることにもなる厳しいものだ。
時々耳にする当局者、関係者による自国通貨安懸念の発言は、通貨安に総合的な実害があるというよりも、通貨安を放置することで、他国から経済制裁を受けるようになることを懸念していると理解した方が正確だ。
ギリシャの場合は、独自の通貨がないので、どんなに困窮し、赤字が膨らみ、信用力が下がっても、ユーロ安には直結しない。ギリシャ問題が、ユーロ圏全体の問題と捉えられて、悪影響が懸念されてからユーロ安となる。
もしも、ユーロがなかったなら、あるいは、ギリシャ国民がユーロへの参加を国民投票で否決していたなら、私はギリシャ危機はギリシャ政府による金融緩和、通貨安、財政出動などで乗り切ることができ、従って、IMFからの支援と緊縮政策、資金調達規制などを受け入れることもなく、「中央、地方政府の歳出削減、最低賃金の引き下げ、公共事業の急速な民営化、労組団体交渉の禁止、年金支給の大幅削減」もなかったと見ている。
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