FRBが警戒する「2019年から2020年にかけての経済後退」
FRBによる経済見通しの詳細は、「経済見通し(PDFファイル)」の表をご覧ください。
上記グラフの見通しでは、ざっくり言葉だけで言えば、「アメリカでは、トランプ大統領が『景気の良い時の大型減税』などという経済学の教科書にも載ってないような掟破りをしたので、この春からとうとうインフレが火を噴き始めた」と、今のFRBはとても困惑している様子がうかがわれます。
上記のグラフでは、「今のFRBは『2%インフレ目標』を掲げているので、今後は穏やかなペースながらも政策金利を4回くらい引き上げていかざるを得ない」としています。
ところがFRBは、「このままでは、2019年のどこかの時点で、FRBの政策金利は中立金利を上回って、金融引き締め的になってしまうだろう」「その結果、アメリカ経済の成長率は、2019年から2020年にかけて穏やかに減速していくかもしれない」という、けっこう恐ろしいことを、しれっと平静を保ちながら、静かな警鐘を鳴らしているのです。
が、どういうわけか、この日本では、こういうことを解説するエコノミストが存在していません…。
FRBが密かに訴えていること
この表の数値が、「平たく言えば具体的に何を訴えているか?」については、ざっくり以下の6点が挙げられます。
- トランプ減税のおかげで、失業率が異常に下がっている
- トランプ減税のおかげで、放っておくとインフレにも火が付きそう
- 2018年は「2%の物価安定目標」を遵守するために(インフレを予防するために)、穏やかなペースながらも4回の利上げを行っていくしかないだろう
- その結果、2019年には、FRBの政策金利は中立金利を上回って、FRBの金融政策は金融引き締め的になってしまうかもしれない
- その結果、アメリカ経済は、2019年から2020年にかけて減速していくかもしれない
- すなわち、「角(2%物価安定目標)を矯めて牛(実体経済)を殺す(ツノヲタメテウシヲコロス)」ような事態が起きるだろう
と、上の表は、しれ~っと目立たないように警鐘を鳴らしているのです。
いみじくもバーナンキFRB前議長が、「トランプ大統領の大幅減税のせいでFRBの仕事がしづらくなっている」と言っているのは、こういうことなのです。
6月FOMCは「インフレ放置政策」へ転換するための伏線
私は、パウエルFRBは2019年の早い時期に、政策金利の引き上げを「打ち止める」と予測します。あるいは、2019年から「2%インフレ目標」を、「3%インフレ目標」へと切り替えるかもしれません。
そうすれば、パウエルFRBは、2019年の政策金利の引き上げを「穏やかな引き上げ」から「もっともっと穏やかな引き上げ」へと、変更できます。
あるいは、パウエルFRBは、2019年から「物価水準目標」という新しい金融政策へと大転換するかもしれません。
いずれにせよ、これらの政策は、どれが採用されるにしても、私が昨年末より予測していた「インフレ放置政策」です。