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「資産は貯金だけ」がいちばん悲惨。日銀「緩和の副作用」で国民はますます貧乏に=斎藤満

預貯金だけの人は大きく資産を減らした

内閣府の国民経済計算年報から、これまでの家計の「財産所得」並びに利子所得の動きを見てみましょう。

家計部門(個人事業主を含む)の財産所得は、1990年前後では55兆円から60兆円近くに達していました。それが最新データの2016年度では受け取り財産所得が27兆円まで縮小しています。

特に、この内訳を94年度と16年度とで比較してみると、94年度は財産所得全体が48.8兆円に対し、利子所得が27.4兆円ありました。

これに対して、2016年度は財産所得27兆円に対し、利子所得は6.1兆円に減少、替わって配当所得が94年度の1.3兆円から2016年度には8.1兆円に拡大しています。

株を所有していた人は配当所得の増加を享受しましたが、預貯金だけの人は、大幅な所得減に見舞われています。

16年度においては、まだ金利が高かったころの預貯金利子が支えていた面がありますが、現在の金利は、普通(通常)預貯金で0.001%、定期預金は平均で0.012%(日銀による)となっています。

1,800兆円の金融資産といっても、現金を除き、国債を加えた900兆円の預貯金と国債がこれから生み出す金利収入は、せいぜい900億円(税込)という計算になります。

利子所得が年間30兆円もあった頃と比べると、低金利政策が家計の収入を大きく減らしたことが如実に表れています。

労働者にお金が回らなくなっている

この日銀による金利コントロールは、労働分配率(生産された付加価値のうち、労働者が賃金として受け取る比率)の低下に拍車をかけています。

国民所得統計で見た労働分配率を、国内総生産(GDP)に対する賃金報酬の割合で見ると、94年度はGDPが502.6兆円に対して、賃金報酬は232.1兆円で、労働分配率は46.2%となります。

これに対して、2016年度はGDPが539.3兆円に拡大したのに対し、賃金報酬は229.1兆円にむしろ減少し、労働分配率は42.5%に低下しています。

これだけでも消費を圧迫する形になっていますが、これに利子所得を加えた分配率でみると、94年度の51.6%から、16年度は43.6%にさらに大きく低下しています。

Next: 利子収入の大幅減で、家計は消費増税と変わらないほどの負担増に

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