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英国よ本当にEUを出ていくのか? 国民投票後に変化した意外なデータ=矢口新

英国経済の現況:失業率が改善してきている

国民投票でブレグジットが決まれば、すぐにでも経済危機が訪れるとした予測に反し、英国経済は健闘している。

ここでは、いくつもある経済指標のうち、失業率GDP成長率住宅価格の3つから、ブレグジットの影響がまだ出ていない2016年6月の数値と、その半年後、1年後、1年半後の数値を見比べてみた。2年後(2018年6月)の数値はまだ発表されていない。

2016年4-6月のILO方式失業率は4.9%だった。3-5月と同水準だった。7月の失業保険受給者ベース失業率は2.2%だった。6月と同水準だった。失業保険申請件数は8600人減だった。

2016年10-12月のILO方式失業率は4.8%だった。9-11月と同水準だった。1月の失業保険申請ベース失業率は2.1%だった。12月の2.3%から低下した。失業保険申請件数は4万2400件減少した。

2017年4-6月のILO方式失業率は4.4%だった。3-5月の4.5%から低下、1975年以来の低水準となった。雇用者数は12万5000人増だった。7月の失業保険申請ベース失業率は2.3%と、6月と同水準だった。失業保険申請件数は4200件減だった。

2017年10-12月のILO方式失業率は4.4%だった。9-11月の4.3%から上昇した。1月の失業保険申請件数ベース失業率は2.3%だった。12月の2.4%から低下した。失業保険申請件数は7200件減少した。

英国の失業率は悪化どころか、40年来の低水準に改善してきている

2016年第2四半期のGDP:前期比0.7%増、前年比2.1%増
2016年第4四半期のGDP:前期比0.6%増、前年比2.2%増
2017年第2四半期のGDP:前期比0.3%増、前年比1.7%増
2017年第4四半期のGDP:前期比0.4%増、前年比1.4%増

GDP成長率は減速気味だ。とはいえ、他の先進国に比べて見劣りするわけではない。

2016年6月のネーションワイド住宅価格:前月比+0.2%、前年比+5.1%
2016年12月のネーションワイド住宅価格:前月比+0.8%、前年比+4.5%
2017年6月のネーションワイド住宅価格:前月比+1.1%、前年比+3.1%
2017年12月のネーションワイド住宅価格:前月比+0.6%、前年比+2.6%

英国の住宅価格の指標は数多くあるので、ネーションワイドの数値を選んだことが適当かどうかは分からない。とはいえ、どの数値も傾向は似通っており、全体としては低下気味だ。もっとも、住宅価格の高騰が社会問題化していたので、価格上昇のペースが鈍っていることを好感する向きもある。

これらの数値を総合的に判断すると、今のところ危機的なものは見られていないと言える。

国民投票後の市場の反応は…

ブレグジットを決めた国民投票後、英国の通貨ポンドは対主要通貨で売り込まれた。対ユーロでは16%以上下落(対ポンドでユーロが上昇)。まだ、ポンドはこの2年余りの安値圏にある。

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対ドルでは12%弱下落。この2年余りの高値安値の半値辺りまで戻した。

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対円では約8%下落した。この2年余りの半値以上戻した。

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10年国債の先物価格は2%弱上昇した。債券価格の上昇は、利回り低下を意味するので、金利が低下したことになる。こちらは、利上げ観測もあり、金利が低下し続ける地合いとはなっていない。

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通貨安や金利低下は、基本的に経済や株式市場には追い風だ。株式市場は2016年6月23日の終値から、21%以上上昇している。

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こうして見ると、ブレグジットに賛成すれば英国経済は破滅だとまで煽っていた一部のメディアは、反対派あるいはEUや権威主義者のプロパガンダに加担させられていたと見なせるだろう。

Next: 英国民は各家計に年間最大14万円の損失?/トランプの功罪

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