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英国よ本当にEUを出ていくのか? 国民投票後に変化した意外なデータ=矢口新

残留派の理由は?

EU加盟国の基本原理の1つは、国境を越えた「往来の自由」だ。残留派は、他のEU加盟国に自由に行って暮らし、働く利便性を支持した。加盟国であることの大きな恩恵は、EU諸国への輸出が容易で、移民の多くは若く、雇用を求めているため、経済成長をもたらし、公共サービスの担い手にもなるとした。また、EUを離脱すれば英国の国際社会での地位が損なわれるとした。

ここで、離脱派、残留派の言い分を振り返ってみると、当時はポピュリズムだとして退けられていたEUからの離脱が、EU加盟国全体に広がりを見せてきた理由を垣間見ることができる。ブレグジット投票以降も留まることを知らない避難民の流入だ。残留派の拠り所である「往来の自由」が、必ずしも理想的なものではなくなってきたのだ。

EU離脱について定めた「第50条(Article 50)」

「第50条」とは、EU全加盟国が調印し2009年に立法化された協定「EU基本条約(通称リスボン条約)」の一部で、EUを離脱したい国がある場合の仕組みを述べたものだ。リスボン条約が調印されるまでは、加盟国がEUを離脱するための正式な仕組みが存在しなかった。

第50条はわずか5段落と非常に短く、いかなる加盟国もEUからの離脱を決められること、欧州理事会に通知のうえ、EUと離脱について交渉しなければいけないこと、合意までに2年あること、全員が合意すれば延長は可能、離脱国は離脱に関するEU内の協議に参加できないこと、などが定められている。

決別は2019年3月29日の金曜日

ブレグジットには、リスボン条約の「第50条」を発動させなければならない。第50条を発動すれば、離脱の条件に合意するために双方に2年間という期間が与えられる。メイ首相は2017年3月29日に第50条を発動したため、英国が離脱するのは2019年3月29日の金曜日ということになる。EU加盟国全28カ国が合意すれば、延長も可能だ。

ブレグジットの仕組みがどうなっているのか、本当に分かっている人は誰もいないという。第50条は、2009年後半に策定されたばかりで、これまで適用されたことがないためだ。英国が2019年3月30日にEUの加盟国でなくなるまで、EU法は英国で効力を持ち続ける。英国は引き続き、EU条約や法律を順守することになるが、意思決定のいかなるプロセスにも参加することはできない。

何千もの項目を抱える、43年分の条約や合意をほどく作業は、決して簡単ではない。これまで行われたことがないため、多くの困難が予想されている。中でも離脱後の貿易協定は、30以上もの欧州全土の国と地域の議会が全会一致で承認する必要があり、国民投票を実施する議会もあると考えられるため、最も複雑な交渉になると言われている。

EUの公用語はどうなる?

EUの公用語は以下の24言語だ。加盟28カ国よりも言語数が少ないのは、例えば、ベルギーの公用語はフランス語であるからだ。

ブルガリア語、チェコ語、デンマーク語、オランダ語、英語、エストニア語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、クロアチア語、ハンガリー語、アイルランド語、イタリア語、ラトビア語、リトアニア語、マルタ語、ポーランド語、ポルトガル語、ルーマニア語、スロバキア語、スロベニア語、スペイン語、スウェーデン語

このうち英語が公用語なのは英国だけである。ECB(European Central Bank:欧州中央銀行=ユーロ圏の中央銀行)のドラギ総裁の記者会見が英語で行われるように、ブレグジット後も、EUでの共通語は主に英語であり続ける見込みだ。逆にブレグジット後の方が、英語がEU加盟国中の特定の国の言語ではなくなるため、中立性が高まると言える。

Next: 離脱には莫大なお金がかかる。英国民は変化に耐えられるか?

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