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ただの食い物屋になってしまった「鳥貴族」、客数と株価を落とした戦略ミスとは?=山田健彦

立派な経営理念を掲げているが…

外食産業のProduct(商品)とは何でしょうか。

焼き鳥、ステーキ、そば、カレー等という口に入れる食べ物でしょうか? 単に食べ物を提供するのであれば「早い、安い、うまい」がキーとなる、「食い物屋」であれば十分かもしれません。

外食産業で重要なのは、味、立地、スタッフの接客態度、客層だと言われています。「食い物屋」では味と立地が重要で、それよりやや重みは薄れてスタッフの接客態度、客層と続きます。

さて、鳥貴族<3193>ですが、そのユニークな社名は、「お客様を【貴族】扱いする(大切にしていく)」「オシャレな名前にする(女性客を増やす)」という2つを狙ってつけたそうです。

同社は、世界一の焼鳥屋を目指し、全世界で2千店舗の出店を目指し、中間目標は2021年7月期、東京オリンピック・パラリンピックが開催される事業年度中までに1千店舗の出店です。

直近の有価証券報告書から「事業の内容」を見てみましょう。

経営理念として、

1.販売価格
すべての商品を均一価格にして客が商品を選ぶ楽しさを提供。

2.商品開発
食材は全品国産を使用。鶏肉は劣化が早いことから、酸素に触れる時間を短くするため、店舗で串打ちを行っており、セントラルキッチンを保有していない。

3.接客
「元気でホスピタリティあふれる接客の提供」をスローガンとして、お客様の再来店につながる接客を工夫。

4.内装
「焼き鳥屋」でイメージされる「赤ちょうちんにカウンター」というイメージを払拭し、若者や女性でも入りやすい、テーブル席を増やすなど明るい空間づくりを目指す。

としています。

ただの「食い物屋」になってしまった

事業、株価の動向ですが、昨年10月に値上げをして以来、客単価は伸びているものの来店客数が減少していて、7月6日には通期業績予想の下方修正を行いました。株価も低迷しています。

鳥貴族<3193> 日足(SBI証券提供)

鳥貴族<3193> 日足(SBI証券提供)

同社は人手不足、人件費高騰対策として注文用タッチパネルを導入して省力化を進め、1店舗平均で月20万~30万円ほど人件費低減ができたようです。

しかし、その結果「従業員の主要な仕事が品出しと片付けのみとなり、お客さんとのコミュニケーションが希薄になり、追加注文などの声がけがなくなった(会社側資料による)」としています。

コミュニケーションの希薄化は、経営理念(3)の「元気でホスピタリティあふれる接客の提供」からの方針転換とも考えられ、それまでは外食産業の中でのポジションニングでは「食い物屋」よりは少し上に位置していたのが、ほぼ完全な「食い物屋」になってしまったと思われます。

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