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新興国の外貨準備が年ベースで初の減少。「マーケットの更なる下落」も頭の片隅に置くべき=荒川雄一

皆さん、こんにちは!国際フィナンシャルコンサルタントの荒川 雄一です。
さて、中国の経済成長の減速によって、“市場”には様々な影響が出始めています。資源価格(商品市況)が大幅に下落するとともに、資源・新興国通貨も下落、そして、NYダウ、日経平均をはじめとする株価の急落など、“想定していた”とはいえ、やはり、“巨象”中国が“くしゃみ”をするだけで、その影響は、市場を過敏に反応させます。

そんな中、各国の経済・貿易などに非常に大きな意味を持つ「外貨準備マネー」の動向にも、変化が観られます。今回は、この「外貨準備マネー」を通じて、経済・市場動向を考えてみたいと思います。

外貨準備マネーからみる経済・市場動向

外貨準備の通貨別シェア

まずは、国際通貨基金(IMF)が公表している外貨準備の通貨別シェアを見てみましょう。昨年9月末時点で、通貨構成比がわかっている各国における外貨準備残高は、6兆1857億ドル(約742兆円)でした。そして、その通貨構成比をみると以下のようになっています。

米ドル 62.3%
ユーロ 22.6%
3.9%
ポンド 3.8%
スイスフラン 0.2%
その他通貨 6.9%

ここですぐに目につくのは、ユーロの比率が低下していることです。22.6%という水準は、2002年9月以来、12年ぶりの低い水準となっています。要因としては、ユーロが対ドルで、昨年6月から9月の3カ月で約8%も下落したこととともに、各国中央銀行によるユーロ買いが低下していることなどが挙げられます。

一時は、「米ドルに次ぐ基軸通貨」といった声もあり、構成比も30%近くまで上昇したユーロですが、今はギリシャなどをはじめとする南欧諸国の財政問題などに直面し、その勢いは完全に無くなってしまいました。

とはいえ、依然として1位を保っている「基軸通貨米ドル」も、このところ構成比率は低下傾向にあります。また、「円」も何とか「第3番目の通貨」を維持してはいますが、構成比率は低位で推移しています。

では、逆に伸びている通貨は何なのでしょうか?

それは、上記のカテゴリーの「その他通貨」です。5年前は、約3%しかありませんでしたが、ここにきて「円」や「ポンド」よりも高い比率となっています。

その他の中で、代表的な通貨が、豪ドルとカナダドルです。先進国であると共に、資源国といった共通点を持っています。ここにきて資源(商品)価格の大幅下落を受け、通貨安とはなっていますが、政情が安定している先進国なだけに、今後も、ある一定の「通貨シェア」は、維持するとみています。

一方、最近存在感を見せているのが、何と言っても、「人民元」です。特に、アフリカとの経済関係を強化する中、ナイジェリアやナミビアなどが、人民元を外貨準備に組み込む動きが加速してきています。ここにきて、“通貨切り下げ”を行った中国ですが、その影響力はいまだ大きく、今後の中国の外貨準備動向には、注視が必要です。

各国の思惑は色々とありますが、自国通貨の防衛、経済・貿易の拡大など、外貨準備の持つ意味合いからすると、今後は、より多様な通貨への「分散」が進むものと考えられます。

新興国の外貨準備

さて、外貨準備の変化は、新興国においてより鮮明に表れています。

IMFの統計によれば、新興国の外貨準備は、2014年の6月末をピークに、2四半期連続で残高は減少し、年ベースで初めて前年比“-1.4%”の減少となりました。

要因としては、前述のユーロ安のほか、アメリカ連邦準備理事会(FRB)の量的金融緩和の停止により、新興国に流れていた投資マネーが、米国に戻ったことなどが考えられます。

また、新興国の中でも、中東やロシアなど、原油価格の下落の影響を大きく受けている国や地域においては、外貨準備の積立額の減少、または積み立ての取り崩しなども起きており、外貨準備高減少の一つの要因としてあげることができるでしょう。

とはいえ、新興国の外貨準備は、この10年間で約5倍に膨らんでいます。その多くの資金は、「ソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)」として、世界中の株式や債券などに投資を行ってきました。現在危惧されているのは、外貨準備の減少により、SWFによる投資が減り(投資マネーの減少)、結果、世界の株式や債券市場への資金流入が滞り、「リスクオフ」となることです。

中国経済の減速、資源価格の下落、資源国通貨・新興国通貨の下落によって、「外貨準備の減少=マーケットの更なる下落」という“流れ”も、頭の片隅には置いておく必要がありそうです。

外貨準備動向から、経済・市場を眺めると、様々なことが見えてきます。今後も、引き続きウォッチしていきたいと思います。

海外ファンドで資産を作ろう!』(2015年9月4日号)より一部抜粋

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