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日本人は個人情報保護を諦めたのか? 世界は自分の情報は自分で守る時代へ=岩田昭男

ビッグデータとSNSで精度アップ

そして、それから数年経った現在、マーケティングの技術は長足の進歩を遂げました。ビッグデータやSNSを使うようになって、その正確度がさらに高まっています。

例えば、ネット検索をしているときやSNSを眺めているとき、今まさに興味を持っている商品の広告が現れてドキッとしたことはないでしょうか。

まるで壁の裏から覗かれているようで薄気味悪い気がしますが、これは、FANG(Facebook、アマゾン、Netflix、Google)が関連するサイトでよく起こります。そうしたIT大手企業が、あなたの検索履歴や購買履歴をもとにマーケティングを行っているからです。

Tポイントの場合は、買い物のたびに「いつ」「どこで」「いくらで」といったデータが中心でしたが、今はどの事業者もこうした購買履歴だけではなく、位置情報、検索履歴、ウェブでの行動履歴まで集めてAIの力も借りながらソーシャルCRMという技法であなたを分析しています。

こうしたビッグデータを使った広告手法によって分析の迅速性と正確性は飛躍的に向上しています。利用者が欲しいもの、求めるものをリアルタイムにキャッチできる状況が生まれています。

しかし、それは、便利な面がある一方で、プライバシーが侵害されているようにも感じます。しつこく繰り返される広告に、「いくらなんでもやり過ぎ」とウンザリしている人も多いと思います。自分の情報が企業によって勝手に使われていると気づくからです。

日本人は個人情報保護を諦めたのか?

日本人は情報漏洩には敏感です。というより敏感でした。

かつてはソフトバンクが自社の顧客情報を漏らしたとして大騒ぎとなり、1件あたり500円で補償したといった事件がありました。2014年には教育事業大手のベネッセが3,504万件もの顧客情報を流出させるという事件が起こりました。この時は子どもたちの情報を盗まれたと社会的な問題となりました。

このように以前はこの種の問題は大きな事件となったのです。ところが、今は少々の情報漏洩や個人情報の無断使用では誰も騒がなくなりました。テレビのコメンテーターの中には、ポイントでお得をもらうのだから個人情報の提供は当然だと言って憚らない人まで出てきました。

しかし、なんでもありの今の企業のやり方を許し、こうした御用コメンテーターたちの言葉を垂れ流していると、いつか私たちのプライバシーは丸裸にされて、将来は言論の自由も、行動の自由も失われてしまうのではないかと心配になります。

そうならないように個人情報の乱用に規制をかけて個人情報を自分の手に取り戻したいと最近は考えるようになりました。

といっても、日本では、2017年5月に施行された「改正個人情報保護法」を見ても、企業寄りの内容で、利用者への配慮がほとんど見られません(企業が個人情報を利用する際に本人の同意を求めなくても良い、通知だけで良いといった内容になっています)。これでは、いつまで経っても今の状況は改善しません。

この絶望的な社会で買い物を続けなければならないのか…と考えていましたが、この5月に欧州(EU)で歴史的な動きがあり、一筋の光が差し込みました。

Next: 期待されるデジタル世界の人権宣言。個人情報を私たちはどう守る?

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